人は、知らないものより「知っている商品」を選びやすい。居酒屋で日本酒を選ぶ時も、よほど詳しい人でなければ、初めて見る銘柄より、どこかで聞いたことのある銘柄を選びたくなるはずです。
たとえば、獺祭、久保田、八海山、黒龍、十四代。味の違いを細かく説明できなくても、「名前だけは聞いたことがある」というだけで、少し安心して選べる。
これは、お酒に限った話ではありません。
スーパーで調味料を選ぶ時も、コンビニでお菓子を選ぶ時も、Amazonで商品を探す時も、人はまったく知らないものより、どこかで見たことがあるものを選びやすいのです。
人は知らない商品を選ぶ時に少し不安になる
居酒屋で日本酒のメニューを見た時、知らない銘柄ばかり並んでいると迷います。
甘口なのか、辛口なのか。
飲みやすいのか、クセが強いのか。
頼んで失敗しないか。
こういう不安が少し出てきます。
その時に、聞いたことがある名前を見つけると、なんとなく安心します。
「これなら知ってる」
「有名っぽい」
「たぶん外さないだろう」
そう感じるだけで、選ぶハードルが下がります。
つまり、人は商品の中身を完全に理解してから選んでいるわけではありません。
知っている気がする。
見たことがある。
誰かが話していた。
その程度の接触でも、選ばれる理由になるのです。
親近感は、商品の安心感に変わる
人は、まったく知らないものには警戒します。
これは商品でも同じです。
聞いたことがない酒。
見たことがないブランド。
知らないメーカー。
知らないサービス。
こういうものは、たとえ品質が良くても、選ばれるまでに時間がかかります。
逆に、何度か接触している商品は安心されやすい。
テレビCMで見た。
SNSで見た。
店頭で見た。
友達が話していた。
一度も買ったことがなくても、何度か接触しているだけで「なんとなく知っている商品」になります。
そして、買う場面になった時、その親近感が選ぶ理由になります。
心理学では、こうした現象を「単純接触効果」と呼びます。難しく聞こえますが、要するに「何度も見たものには親近感を持ちやすい」という話です。
獺祭は「なんとなく知っている日本酒」になった
獺祭は、山口県岩国市の酒蔵が作る日本酒ブランドです。日本酒に詳しくない人でも、名前だけは聞いたことがあるという人は多いかもしれません。
ここで重要なのは、味の細かい違いを理解しているかどうかではありません。
「なんとなく聞いたことがある」
この状態になっていることです。
居酒屋で知らない日本酒が並ぶ中に、獺祭という名前がある。すると、日本酒に詳しくない人でも「あ、聞いたことある」となります。
この瞬間、選ばれる確率は上がります。
商品が売れるかどうかは、買う瞬間だけで決まっているわけではありません。
その前に、何度名前を見たか。
どこかで話題に触れたか。
誰かが飲んでいる場面を見たか。
そうした接点の積み重ねが、注文する瞬間の安心感になります。
つまり獺祭は、「味を細かく知らなくても、なんとなく安心して選べる日本酒」になっているわけです。
広告はすぐ売るためだけにあるのではない
広告や発信というと、多くの人は「出したらすぐ売れるもの」と考えます。
でも実際には、広告にはもうひとつ大事な役割があります。
それが、親近感を作ることです。
今すぐ買わない人にも、名前を覚えてもらう。存在を知ってもらう。「そういえばあったな」と思い出してもらう。
これが後から効いてきます。
たとえば、コカ・コーラも最初から世界中で飲まれていたわけではありません。最初は知られていない飲み物でした。それが接点を増やし、試すきっかけを作り、少しずつ「知っている飲み物」になっていった。
無印良品も、派手に欲しがらせるというより、「なんとなく安心できる」「生活になじむ」という感覚で選ばれています。これも、長年の接点によって作られた親近感が大きいはずです。
また、コンビニが入口近くに雑誌を置いて「人がいる店」に見せていた話にも通じます。人は、まったく知らないものより、すでに人が集まっているもの、見たことがあるものに安心します。
つまり、売れる商品は、買われる前からすでに準備されています。
買う瞬間に初めて勝負しているのではなく、その前から何度も接点を作り、「見たことがある」「聞いたことがある」「なんとなく安心する」という状態を作っているのです。
この事例から分かること
人が居酒屋で「なんとなく知っている酒」を頼んでしまう理由から分かるのは、認知は売上の土台になるということです。
商品が良いだけでは、選ばれません。
名前を知られているか。
何度か接触されているか。
買う場面で思い出してもらえるか。
ここが大事です。
知らない商品は、比較される前に選択肢にすら入りません。
でも、知っている商品は、それだけで一歩前に出ます。
広告、ブログ、X、メルマガ、動画、店頭POP。どれも、すぐに売るためだけではありません。お客さんの頭の中に、少しずつ接点を積み上げるためのものです。
売れる商品には、必ず理由があります。
そしてその理由は、商品の中身だけでなく、買う前から何度も接触して「なんとなく知っている状態」になっていることにも隠されています。
人は、知らない商品より、知っている気がする商品を選びやすい。
だからこそ、発信も広告も、一度で終わらせてはいけないのです。


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