ドンキホーテのマーケティングで面白いのは、店内がきれいに整理されすぎていないところです。通路は狭く、商品はぎっしり並び、天井近くまで積み上げられている。初めて行くと、「どこに何があるのか分かりにくい」と感じる人もいるはずです。
でも、よく考えると不思議です。
普通のお店なら、商品は探しやすいほうがいい。通路は広いほうがいい。売り場はすっきりしているほうがいい。そう考えるのが自然です。
それなのに、なぜドン・キホーテはあえて迷路のような売り場にしているのでしょうか。
答えは、買い物を「宝探し」に変えているからです。
PPIHの資料でも、ドン・キホーテの売り場は、商品を天井近くまで積み上げる圧縮陳列や、カラフルな手書きPOPが特徴だと説明されています。また、創業期の狭い店内で、床から天井まで商品を積み上げ、大量の手書きPOPを付けたことが「圧縮陳列」「ジャングルのような宝探し空間」の始まりだったとされています。
目的の商品だけ買って帰らせない
ドン・キホーテの店内が迷路のように見える理由の1つは、店内を歩く時間が長くなりやすいからです。もし売り場がすっきりしていて、欲しい商品まですぐ行けるなら、お客さんは目的の商品だけを買って帰ります。
もちろん、それは便利です。
でも、ドンキの面白さはそこではありません。
目当ての商品を探している途中で、安いお菓子、見たことのないコスメ、謎の便利グッズ、季節商品、限定品が次々に目に入ります。「これも安いな」「こんなのあるんだ」「ついでに買っておこう」と、予定になかった商品との出会いが生まれます。
つまり、ドンキの迷路感は、ただ分かりにくいだけではありません。偶然の発見を増やすための売り場になっているのです。
買い物を「宝探し」に変えている
2つ目の理由は、買い物そのものをエンタメにしていることです。
ドン・キホーテに行くと、日用品を買いに行っただけなのに、気づけば店内をぐるぐる回っていることがあります。食品、家電、コスメ、衣類、雑貨、パーティーグッズまで、ジャンルの違う商品が大量に並んでいるので、「何か面白いものがありそう」という気分になります。
これは、普通の買い物とは少し違います。
効率よく買うというより、探すこと自体が楽しい。商品棚を見ること自体が楽しい。掘り出し物を見つけた時に、少し得をした気分になる。
この感覚が、ドンキらしさです。
公式の過去資料でも、圧縮陳列は「ジャングル」のような売り場を作り、驚きや発見の価値を提供するものとして説明されています。つまり、ドンキは商品を並べているだけではなく、「何か見つかるかもしれない」という期待感を売っているのです。
手書きPOPが、その場で買う理由を作っている
3つ目の理由は、手書きPOPです。
ドン・キホーテといえば、黄色や赤の目立つPOP、手書き風の文字、強い値引き表現が印象的です。あれは単なる飾りではありません。売り場に立っているお客さんに、その場で買う理由を伝えるミニ広告です。
ネット販売なら、LPや商品説明文で「なぜ買うべきか」を伝えます。ドンキの場合、それを売り場の棚ごとにやっています。
「安い」「人気」「今だけ」「担当者おすすめ」「在庫限り」。こうした言葉が目に入ると、お客さんは足を止めます。商品だけが置かれている棚よりも、買う理由が書かれた棚のほうが強いのです。
これはコピーライティングでも同じです。
商品を見せるだけでは弱い。なぜ今買うべきなのか。なぜ他ではなくこれなのか。誰におすすめなのか。そこまで言葉にすることで、商品は選ばれやすくなります。
この事例から学べること
ドン・キホーテの事例から学べるのは、売れる導線は必ずしも最短距離である必要はないということです。
普通は、分かりやすい導線が正義だと思いがちです。もちろん、申し込みページや決済ページでは分かりやすさが重要です。でも、商品に興味を持ってもらう段階では、あえて寄り道があることで売れる場合があります。
ドンキは、目的の商品まで一直線に案内するのではなく、途中でいろいろな商品に出会わせます。その寄り道の中で、「ついで買い」や「衝動買い」が生まれます。
これはブログやLPにも応用できます。
ただ商品説明を並べるだけではなく、読者が「へえ」「そうなんだ」「自分にも関係あるかも」と感じる発見を入れる。売り込み一直線ではなく、興味が深まる順番で情報を出す。すると、読み進める理由が生まれます。
ドン・キホーテは、迷路のような売り場で、お客さんに発見を与えている。だから、ただ安いだけの店ではなく、「行くと何かありそうな店」として選ばれているのです。
売れる商品には、必ず理由があります。そしてその理由は、商品そのものだけでなく、見せ方、導線、言葉の設計にもあります。


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