マクドナルドの匂い広告は、商品写真もロゴも使わずにポテトの香りだけで来店を促した、非常にユニークな広告事例です。
オランダで展開された「Smells Like McDonald’s」では、街中に赤や黄色の無地の看板が設置されました。普通なら何の広告か分かりません。ところが、その看板に近づくと、マクドナルドのポテトの匂いがしてくる。つまり、目ではなく鼻でマクドナルドを思い出させる広告だったわけです。
マクドナルドの広告は商品写真ではなく記憶を使った
この広告がすごいのは、ポテトそのものを見せなかったことです。普通の広告なら、ポテトの写真を大きく載せて「揚げたて」「おいしい」「今すぐ食べたい」と伝えます。でも、マクドナルドほど認知されたブランドになると、写真がなくても匂いだけで記憶が動きます。子どもの頃に食べた記憶、学校帰りに寄った記憶、休日に家族で行った記憶。ポテトの匂いは、単なる香りではなく「マクドナルドっぽい時間」を思い出させるスイッチになります。
マーケティングで大事なのは、商品を説明することだけではありません。お客さんの中にすでにある記憶や感情と、商品を結びつけることです。この広告は「ポテトを買ってください」と言っていません。代わりに、「あの匂い、思い出しませんか?」と五感に訴えています。これが強い。
ポテトの匂いでブランド想起を起こした
2つ目のポイントは、ブランド想起です。ブランド想起とは、ある色、音、匂い、言葉などに触れた瞬間に、特定のブランドを思い出すことです。マクドナルドには、赤と黄色、ゴールデンアーチ、ポテトの匂いなど、すでに強いブランド資産があります。今回の匂い広告では、あえてロゴも商品写真もキャッチコピーも消し、ポテトの香りだけを主役にしました。看板はユトレヒトとライデンに設置され、近づいた人にポテトの香りが届くように作られていたと発表されています。
これは、かなり勇気のある広告です。なぜなら、普通は「見れば分かるようにしたい」と考えるからです。でも、全部を説明すると、人は考えません。逆に、情報を削ると「これは何だろう?」という余白が生まれます。その余白に、匂いが入ってくる。すると、人は自分の記憶で答えを出します。「これ、マクドナルドじゃない?」と。広告に答えを言われるより、自分で気づいたほうが記憶に残りやすいのです。
匂いで欲しくなった瞬間に来店導線を作った
3つ目のポイントは、導線です。この広告は、ただ話題性を狙っただけではありません。匂いで「食べたい」と思わせたあと、近くの店舗へ向かいやすいように設計されています。報道では、看板はマクドナルド店舗の近くに配置され、香りによって来店を促す狙いがあったと紹介されています。
ここがマーケティング視点では重要です。どれだけ目立つ広告でも、欲しくなった瞬間に買えなければ売上にはつながりにくい。逆に、欲しくなった瞬間にすぐ行動できる導線があると、広告は強くなります。マクドナルドの匂い広告は、認知、記憶、食欲、来店までの流れがつながっていました。だから単なる「変わった広告」ではなく、売上につながる可能性のある広告事例として面白いのです。
この記事のまとめ
マクドナルドの匂い広告から学べるのは、売れる広告は必ずしも多くを語らないということです。商品写真を見せなくても、キャッチコピーを書かなくても、相手の記憶や感情を動かせれば広告は成立します。むしろ、説明を削ることで印象に残ることもあります。
自分の商品やサービスを売る時も同じです。商品の特徴を並べる前に、お客さんの中にある記憶、悩み、欲望とどう結びつけるかを考える。さらに、欲しくなった瞬間に申し込みや購入へ進める導線を用意する。ここまでできて、はじめて「売れる広告」「売れる文章」に近づきます。マクドナルドのポテトの匂い広告は、五感マーケティング、ブランド想起、販売導線の3つがきれいにつながった事例だと言えます。


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