コカ・コーラのマーケティングで面白いのは、今でこそ世界的ブランドなのに、販売当初から爆発的に売れていたわけではないところです。コカ・コーラ公式サイトによると、1886年にアトランタの薬局で販売が始まった当初、初年度の販売数は1日平均9杯でした。
面白いのは、今でこそ世界的ブランドなのに、販売当初から爆発的に売れていたわけではないところです。コカ・コーラ公式サイトによると、1886年にアトランタの薬局で販売が始まった当初、初年度の販売数は1日平均9杯でした。
今のコカ・コーラを考えると、かなり意外です。
世界中で知られている赤いロゴ。コンビニにも、自動販売機にも、スーパーにも並んでいる定番商品。そのコカ・コーラですら、最初は1日にたった9杯しか売れていなかったのです。
では、なぜそこから世界的ブランドになれたのでしょうか。
理由は、味が良かったからだけではありません。商品を知ってもらい、試してもらうために、「損して得取れ」のマーケティングを積み重ねたからです。
最初から「欲しい商品」だったわけではない
今の私たちは、コカ・コーラを見ても驚きません。
黒い炭酸飲料。甘くて刺激がある飲み物。赤いラベルの有名な飲み物。そういうものとして、すでに知っています。
でも、販売当初の人たちにとっては違います。
見慣れない飲み物だったはずです。どんな味なのか分からない。なぜ飲むのか分からない。本当においしいのか分からない。
新しい商品は、知られていないだけで不利です。
どれだけ良い商品でも、お客さんが存在を知らなければ買えません。知っていても、飲む理由が分からなければ手に取りません。
コカ・コーラも、最初はその壁を越える必要がありました。
無料で飲ませる「損して得取れ」の発想
コカ・コーラの初期マーケティングで特に面白いのが、無料クーポンです。
コカ・コーラ公式の歴史では、1887年にコカ・コーラを宣伝するためにクーポンが使われたことが紹介されています。つまり、ただ広告で名前を知らせるだけではなく、実際に飲んでもらうきっかけを作っていたのです。
これはまさに、損して得取れです。
知らない飲み物をいきなり買ってもらうのは難しい。どんな味か分からないし、自分に合うかも分からない。だから、まずはお金を取るより先に、飲んでもらうことを優先したわけです。
最初の一杯を無料にすれば、その瞬間だけ見れば利益は減るかもしれません。
でも、一度飲んで「おいしい」と思ってもらえれば、次は自分で買ってくれるかもしれない。さらに、人に話してくれるかもしれない。
目先の利益を少し手放してでも、まず体験してもらう。
ここが、知られていない商品を広げるうえで重要だったのです。
これは、1本11万円のウイスキーが「20年後の物語」で価値を作った事例とは逆のアプローチです。ウイスキーは高額でも欲しくなる意味を作り、コカ・コーラはまず無料で試してもらう入口を作りました。どちらも、商品そのものだけでなく「買う理由」を設計している点は同じです。
広告と看板で「知っている商品」に変えていった
コカ・コーラは、無料クーポンだけで広がったわけではありません。
初期から広告や看板も使っています。コカ・コーラ公式の歴史では、最初の新聞広告で「Delicious and Refreshing Beverage」と紹介されたことや、「Drink Coca-Cola」と書かれた看板が使われたことが説明されています。
これは、今でいう認知づくりです。
まず名前を知ってもらう。次に、飲み物だと分かってもらう。そして、実際に試してもらう。
当たり前のようですが、ここを飛ばして売ろうとする商品は多いです。
「うちの商品は良いです」
「こだわっています」
「他社より優れています」
そう伝える前に、そもそもお客さんはその商品を知っているのか。何の商品なのか一瞬で分かるのか。自分に関係があると感じられるのか。
ここが整っていなければ、商品はなかなか広がりません。
商品は、伝え方ひとつで印象が変わります。ファッション業界で「ジーパン」を「デニム」と言い換えるように、コカ・コーラも広告や看板によって、ただの黒い飲み物ではなく「おいしくて爽やかな飲み物」として認知を作っていきました。
知らない商品は、まず試す理由が必要
人は、知らない商品をいきなり買うのが苦手です。
失敗したくないからです。
おいしくなかったら嫌だな。自分には合わないかもしれない。買って後悔したくない。そういう小さな不安があります。
だから、新しい商品ほど「試す理由」が必要になります。
コカ・コーラの無料クーポンは、その不安を下げました。
お金を払わずに試せるなら、飲んでみようかなと思える。飲んでみておいしければ、次は買う理由が生まれる。
これは現代のビジネスでも同じです。
無料体験、サンプル、初回限定、診断、セミナー、資料請求。形は違っても、目的は同じです。
いきなり買ってもらうのではなく、まず試してもらう。
この入口を作れる商品は、広がりやすくなります。
この事例から分かること
コカ・コーラの事例から分かるのは、どれだけ強い商品でも、最初は知られていないということです。
今は世界的ブランドでも、始まりは1日平均9杯。そこから、広告、看板、クーポンなどを使って、少しずつ知ってもらい、試してもらい、広がっていきました。
商品が売れない時、つい「商品が悪いのかもしれない」と考えてしまうことがあります。
もちろん、商品そのものを良くする努力は必要です。
でも、それ以前に、まだ知られていないだけかもしれません。伝わっていないだけかもしれません。試すきっかけがないだけかもしれません。
良い商品は、存在しているだけでは売れません。
知ってもらう。興味を持ってもらう。試してもらう。思い出してもらう。
この積み重ねがあって、商品は少しずつ選ばれるようになります。
コカ・コーラですら、最初は1日9杯から始まった。
そして、無料クーポンという「損して得取れ」の発想で、まず飲んでもらうきっかけを作った。
この事例は、商品を売るうえでかなり大事なことを教えてくれます。
売れる商品には、必ず理由があります。そしてその理由は、商品そのものだけでなく、どれだけ伝え続けたか、どれだけ試すきっかけを作ったかにも隠されているのです。


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