世界一高価なサンドイッチとして知られている商品があります。ギネス世界記録によると、商業販売されている最も高価なサンドイッチは、ニューヨークのSerendipity 3で提供される「Quintessential Grilled Cheese」。価格は214ドルとされています。
普通に考えれば、「サンドイッチにそこまで払う?」と思う人のほうが多いはずです。パンにチーズを挟んだ料理なら、もっと安く食べられます。コンビニでも、カフェでも、家でも作れます。
それなのに、このサンドイッチは世界中で話題になり、「一度食べてみたい」と思う人を生み続けています。なぜ、世界一高価なサンドイッチに人は並ぶのでしょうか。
理由は、ただお腹を満たすためではありません。
人が買っているのは、サンドイッチそのものだけではなく、「世界一高いサンドイッチを食べた」という話せる体験だからです。
「世界一高価」という言葉が、行列の理由になる
まず強いのは、「世界一高価なサンドイッチ」という名前です。
普通のチーズサンドなら、誰も振り向きません。でも、「世界一高価なチーズサンド」と言われると、急に気になります。
どれくらい高いのか。何が入っているのか。本当においしいのか。誰が買うのか。なぜそんな価格になるのか。
このように、価格そのものが疑問を生みます。
マーケティングで大事なのは、商品を見た瞬間に「なぜ?」と思わせることです。世界一高価なサンドイッチは、まさにそれができています。
高すぎる価格は、普通なら買われにくくなる原因です。でも、突き抜けると逆にニュースになります。
中途半端に高いだけなら「高いな」で終わります。でも「世界一高い」となると、話題にしやすい。メディアも取り上げやすい。SNSでも紹介しやすい。
つまり、このサンドイッチは、価格そのものが広告になっているのです。
高い理由が見えるから、ただのぼったくりに見えない
高額商品で失敗しやすいのは、「なぜ高いのか」が分からないことです。
ただ値段が高いだけだと、人は不信感を持ちます。
ぼったくりではないか。話題づくりだけではないか。中身が伴っていないのではないか。
でも、このサンドイッチは、高い理由を見せています。
ギネス世界記録の説明では、このサンドイッチには、ドン・ペリニヨンを使ったフレンチプルマンシャンパンブレッド、食用金箔、白トリュフバター、希少なCaciocavallo Podolicoチーズが使われ、南アフリカ産ロブスターのトマトビスクが添えられていると紹介されています。
ここまで聞くと、ただのチーズサンドではなくなります。
パンにも特別感がある。バターにも特別感がある。チーズにも希少性がある。さらにロブスター入りのスープまでついてくる。
食べる前から、「普通のサンドイッチではない」と分かります。
高額商品は、価格だけを見せると高く感じます。でも、高い理由を見せると、少なくとも納得の余地が生まれます。
これは、1本11万円のウイスキーが「20年後の物語」で価値を作った事例とも近いです。高い商品ほど、なぜその価格なのか、どんな意味があるのかを伝える必要があります。
内部リンク:
1本11万円のウイスキーが「20年後の物語」で価値を作った事例
人はサンドイッチではなく「話せる体験」にお金を払う
214ドルのサンドイッチを食べる人は、空腹を満たすためだけに買っているわけではないはずです。
お腹を満たすだけなら、もっと安い選択肢はいくらでもあります。
では、何を買っているのか。
それは、「世界一高価なサンドイッチを食べた」という体験です。
これは、人に話せます。
「ニューヨークで世界一高いサンドイッチを食べてきた」
「チーズサンドなのに214ドルだった」
「金箔とトリュフと希少なチーズが入っていた」
この話は、普通のランチよりも記憶に残ります。
写真も撮りたくなる。SNSにも投稿したくなる。誰かに話したくなる。
ここが大きなポイントです。
商品そのものだけでなく、「人に話したくなる要素」があると、商品は広がりやすくなります。
これはSpotify Wrappedが音楽データを「自分の話」に変えて拡散された事例とも共通します。人は広告を広げたいのではなく、自分が体験した面白い話を共有したくなるのです。
内部リンク:
Spotify Wrappedが音楽データを「自分の話」に変えた事例
高すぎる商品は、店の看板になる
このサンドイッチは、全員に売る商品ではありません。
むしろ、多くの人にとっては「高すぎる商品」です。
でも、それでいいのです。
なぜなら、この商品には看板としての役割があるからです。
世界一高価なサンドイッチを提供している店。
そう聞くだけで、店の名前が記憶に残ります。実際に214ドルのサンドイッチを食べない人でも、「そんな商品がある店」として認識します。
これは、マーケティングでいう話題化の力です。
すべての商品を売れ筋にする必要はありません。中には、売上そのものよりも、ブランドを知ってもらうための商品があってもいい。
極端な商品は、記憶に残りやすい。
そして、記憶に残る商品は、ブランドの入口になります。
この点は、コカ・コーラが販売当初に無料クーポンで「まず知ってもらう入口」を作った事例ともつながります。方法は違いますが、どちらもお客さんの記憶に入るためのきっかけを作っているのです。
内部リンク:
コカ・コーラが無料クーポンで試すきっかけを作った事例
この事例から分かること
世界一高価なサンドイッチの事例から分かるのは、高額商品はただ高くするだけでは選ばれにくいということです。
大事なのは、高い理由があること。
そして、その価格自体が話題になること。
さらに、買った人が誰かに話したくなる体験になっていることです。
安い商品は、買いやすさで広がります。でも高い商品は、意味や話題性や体験価値がないと選ばれにくい。
214ドルのサンドイッチは、ただのチーズサンドではありません。
世界一高価というラベル。
高級食材を使った分かりやすい演出。
食べたことを人に話したくなる体験。
これらが組み合わさって、普通なら「高すぎる」で終わる商品を、行列ができるほど気になる商品に変えているのです。
売れる商品には、必ず理由があります。
そしてその理由は、価格そのものではなく、「なぜその価格なのか」「なぜ人に話したくなるのか」という見せ方の中にも隠されています。


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