Amazonプライムのマーケティングで面白いのは、ただ送料を無料にしているだけではなく、買う前の不安や面倒を減らしているところです。もちろん、Amazonプライムには無料配送やお急ぎ便、日時指定便などの配送特典があります。さらにPrime VideoやPrime Reading、Amazon Musicなどの特典も用意されています。
でも、よく考えると不思議です。
送料無料だけなら、他の通販サイトでもあります。動画配信サービスだけなら、他にも選択肢があります。音楽サービスも、電子書籍サービスも、世の中にはたくさんあります。
送料ではなく「待たなくていい安心」を売っている
Amazonプライムの強さは、送料が無料になることだけではありません。欲しいと思った時に、早く届く期待があることです。
人は商品を買う時、意外と小さな不安で迷います。
送料が高かったら嫌だな。届くのが遅かったら困るな。今買っても使いたい日に間に合うかな。別の店で買ったほうが安いかな。
こうした迷いがあると、購入までに時間がかかります。場合によっては、そのまま買わずに終わります。
でも、Amazonプライムに入っていると、「とりあえずAmazonで見てみよう」となりやすい。配送特典があることで、買う前のストレスがかなり減ります。
つまりAmazonプライムは、単に送料を消しているのではありません。買う時の面倒や不安を消しているのです。
買うまでの迷いを減らしている
Amazonプライムがうまいのは、買う理由を増やすより、買わない理由を減らしているところです。
多くの商品やサービスは、魅力を足そうとします。機能を増やす。特典を増やす。説明を増やす。もちろん、それも大事です。
でも、人が買わない理由は、魅力不足だけではありません。
面倒だから買わない。送料が気になるから買わない。届く日が分からないから買わない。手続きが面倒だから後回しにする。
Amazonプライムは、この小さな引っかかりを減らしています。
たとえば、欲しい本や日用品があった時、「送料がかかるならやめよう」と思うことがあります。でも、プライム配送の対象なら、その迷いが消えやすい。すると、購入までの心理的な距離が短くなります。
売れる導線でも同じです。
お客さんは、商品の良さが分からないからだけでなく、申し込みが面倒、不安が残る、比較が難しい、今買う理由が弱い、といった理由で止まります。だから、売れる導線では「魅力を伝える」だけでなく、「止まる理由を減らす」ことが大事です。
一度入るとAmazonを選ぶ理由が増える
Amazonプライムのもう1つの強さは、一度入るとAmazonを選ぶ理由が増えることです。
月額または年額の会費を払っていると、「せっかくプライムに入っているし、Amazonで買おう」と考えやすくなります。さらに、買い物だけでなく、動画、音楽、電子書籍、セールなどの特典があることで、日常の中でAmazonに触れる回数が増えます。Amazon公式でも、プライム会員は配送特典に加えて、映像、読書、音楽、ゲーム、プライムデーなど複数の特典を利用できると紹介されています。
これは、単発購入ではなく、習慣を作る仕組みです。
人は一度使い慣れたサービスを、なかなか変えません。買い物のたびに比較するより、「Amazonで探す」が習慣になるほうが楽だからです。
つまりAmazonプライムは、1回の注文を取るためのサービスではなく、次もAmazonを選んでもらうための仕組みになっています。
この事例から学べること
Amazonプライムの事例から学べるのは、売れる仕組みは「魅力を足す」だけではなく、「不安と面倒を減らす」ことで強くなるということです。
多くの人は、商品を売る時に「もっとすごいメリットを伝えなければ」と考えます。でも、実際には、お客さんは小さな不安で止まっています。
申し込み方法が分かりにくい。料金が不安。届くまでが遅い。効果があるか分からない。自分に合うか分からない。今買う必要があるのか分からない。
こうした迷いを減らせば、商品は買われやすくなります。
Amazonプライムは、送料無料そのものを売っているのではありません。早く届く安心、送料を気にしなくていい気楽さ、次もAmazonを選べる便利さを売っています。
だから、ただの送料無料サービスではなく、買う前の迷いを減らすマーケティングの仕組みとして強いのです。
売れる商品には、必ず理由があります。そしてその理由は、商品の魅力だけでなく、お客さんが買う前に感じる不安や面倒をどれだけ減らせるかにもあります。


コメント