なぜ、スーパーは牛乳を店の奥に置くのか?

なぜ、スーパーは牛乳を店の奥に置くのか? マーケティング事例

スーパーで牛乳だけ買うつもりだったのに、気づけばパン、お菓子、惣菜までカゴに入っていた。そんな経験はないでしょうか。実はこれ、ただの偶然ではありません。スーパーでは、牛乳のように多くの人が買う日用品が、店の奥に置かれていることがあります。

普通に考えれば、よく買われる商品ほど入口近くに置いたほうが親切に見えます。牛乳、卵、豆腐、肉、冷凍食品。こうした商品がすぐ取れたら、お客さんは短時間で買い物を済ませられます。

でも、スーパーはあえてそうしないことがあります。

なぜ、スーパーは牛乳を店の奥に置くのか。

理由は、お客さんに店内を歩いてもらい、途中で他の商品と出会ってもらうためです。

スーパーは「買うと決まっている商品」を奥に置く

牛乳は、多くの家庭で日常的に買われる商品です。朝食に使う。コーヒーに入れる。子どもが飲む。料理にも使う。つまり、スーパーに行く前から「今日は牛乳を買う」と決まっていることが多い商品です。

こういう商品は、入口に置かなくても探してもらえます。

お客さんは牛乳を買うために、店の奥まで歩いていく。すると、その途中で野菜、パン、お菓子、惣菜、調味料、特売品などが目に入ります。

最初は牛乳だけのつもりだったのに、「そういえばパンもなかった」「この惣菜おいしそう」「このお菓子安いな」と、買い物リストになかった商品に気づく。

ここがスーパーの店内導線のうまさです。

買うと決まっている商品を奥に置くことで、お客さんに店内を歩いてもらう。その移動時間の中で、予定外の商品と出会うきっかけを作っているのです。

奥まで歩く間に、予定外の商品と出会う

スーパーでの買い物は、最初からすべて決まっているようで、実はかなり現場で変わります。

入口で野菜を見る。通路で特売品を見る。パン売り場を通る。惣菜の匂いがする。レジ前でお菓子を見る。

そのたびに、頭の中の買い物リストが少しずつ書き換わります。

「今日はカレーにしようかな」

「牛乳だけのつもりだったけど、明日の朝のパンも買っておこう」

「この唐揚げ、夜ご飯に足せるな」

こうやって、店内を歩くほど購入のチャンスが増えます。

これは、IKEAが店内をわざと遠回りさせる理由とも似ています。IKEAも家具を最短距離で見せるのではなく、ショールームを歩かせながら「こんな暮らしがしたい」と思わせます。スーパーも同じで、牛乳までの道のりの中で「これも必要かも」を作っているのです。

内部リンク:
IKEAが店内をわざと遠回りさせる理由

店内導線は、買い物リストを書き換える

スーパーのすごいところは、お客さんに「買わされている」と感じさせにくいところです。

店員さんが「これも買ってください」と売り込んでくるわけではありません。強いコピーで煽ってくるわけでもありません。ただ、歩く順番の中に商品が置かれているだけです。

でも、その順番が購買に影響します。

牛乳を取りに行く途中に、食パンがある。卵がある。ヨーグルトがある。冷凍食品がある。惣菜がある。お客さんはそれを見ながら、「そういえば必要だった」と気づきます。

つまり、スーパーの導線は、商品を売り込むのではなく、思い出させているのです。

これはマーケティングでかなり重要です。

人は、必要性に気づいていない商品は買いません。でも、目に入った瞬間に「そういえば欲しかった」と思えば、自然にカゴへ入れます。

売れる導線とは、無理やり売ることではありません。お客さんが欲しくなる順番で商品と出会わせることなのです。

便利すぎると、売れる機会が減ることもある

ここで面白いのは、「便利にすること」が必ずしも売上につながるとは限らないことです。

もしスーパーの入口に牛乳、卵、パン、肉、惣菜、レジが全部まとまっていたら、お客さんはすぐに買い物を終えられます。それは便利です。

でも、店側から見ると、お客さんが他の商品と出会う機会が減ります。

もちろん、不便すぎる店は嫌われます。探しにくい、歩きにくい、迷う、疲れる。そうなると逆効果です。

でも、適度に歩いてもらう導線は、売上を作ります。

牛乳を買いに来た人に、パンを思い出してもらう。卵を思い出してもらう。明日の朝食をイメージしてもらう。夕食の一品を足してもらう。

このように、導線は「ついで買い」を生みます。

これは、ミシュランがタイヤを直接売るのではなく、レストランガイドで「車で出かける理由」を作った話にも通じます。ミシュランはタイヤそのものではなく、タイヤが使われる状況を作りました。スーパーも、商品を買う流れの中で、別の商品が必要になる状況を作っているのです。

内部リンク:
ミシュランがレストランガイドでタイヤを売った理由

この事例から分かること

スーパーが牛乳を店の奥に置く理由から分かるのは、売れる導線は、必ずしも最短距離ではないということです。

お客さんにとって便利なだけなら、入口付近に必要な商品を全部置けばいいかもしれません。

でも、売れる導線を作るなら、途中で気づきが生まれる必要があります。

「あ、これも必要だった」

「これも買っておこう」

「今日の夜ご飯に足せそう」

こう思ってもらうためには、商品と出会う順番が大事です。

これはスーパーだけの話ではありません。

ブログ、LP、メルマガ、説明会、セミナー、動画でも同じです。

いきなり商品を見せるのではなく、まず興味を持ってもらう。次に、今の問題に気づいてもらう。そして、必要性が高まったタイミングで商品を見せる。

この順番があるから、売り込み感が弱くなり、納得感が強くなります。

スーパーは、牛乳を奥に置くことで、お客さんを店内に歩かせます。そして、その途中で予定外の商品と出会わせます。

売れる商品には、必ず理由があります。

そしてその理由は、商品そのものだけでなく、お客さんが買いたくなる順番で商品に出会っているかどうかにも隠されています。

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