売上が落ちてくると、まず値下げを考えたくなります。お客さんの財布のひもが固くなっている。以前より反応が悪い。問い合わせも減っている。そんな状況になると、「もっと安くしないと選ばれないのでは」と不安になるのは自然です。
でも、本当にお客さんが見ているのは価格だけなのでしょうか。
景気が悪い時でも、切られない商品があります。逆に、安くても真っ先に解約される商品もあります。お客さんがクレジットカードの明細を見直した時、残される商品と削られる商品の差は、単純な値段の差だけではありません。
この視点を教えてくれるのが、ダイレクト・レスポンス・マーケティングの第一人者、ダン・ケネディです。
ダン・ケネディは、マグネティック・マーケティングの創始者として知られ、世界中の中小企業や起業家に影響を与えてきたマーケターです。著書は多数あり、コンサルタント、セールスライター、講演家、起業家としても活動してきました。高額なコンサルティングやセールスライティング案件でも依頼が途絶えない、まさにダイレクト・レスポンス業界の巨人です。
今回は、そんなダン・ケネディ 不況マーケティングの考え方をもとに、日本の中小企業、個人事業主、講師、コンサル、コンテンツ販売者が使える形に噛み砕いていきます。
ダン・ケネディは「不可欠な存在になれ」と教えている
ダン・ケネディは、不況時には顧客とのコミュニケーションを減らすのではなく、むしろ増やすべきだと考えています。
景気が悪くなると、お客さんは支出を見直します。毎月払っているもの。なんとなく続けているもの。あれば便利だけど、なくても困らないもの。こうした商品やサービスは、真っ先に削られます。
だからこそ、ダン・ケネディは、安い代替品に置き換えられる選択肢の一つではなく、顧客にとって不可欠で、有意義な存在になることの重要性を語っています。
守るべきものは売上ではなく関係性
不況時に守るべきものは、単なる売上ではありません。お客さんとの関係です。
商品そのものより、「なぜこの人から買い続けるのか」「なぜこのサービスは残しておくべきなのか」という理由を強くする必要があります。
売上は、顧客との関係の結果として生まれます。関係性が弱ければ、価格で比べられます。価格で比べられると、もっと安い代替品が出てきた時に負けやすくなります。
反対に、関係性が強い商品は、単なる比較対象になりにくいです。「安いから」ではなく、「この人だから」「ここだから」「これがないと困るから」という理由で残されます。
安い商品が残るとは限らない
景気が悪くなると、多くの人は「安い方が残る」と考えます。
しかし、現実にはそう単純ではありません。月額3,000円のサービスでも、使っている意味が分からなければ解約されます。逆に、月額30,000円でも、それが売上や健康や家族関係に直結していると感じられていれば、残されることがあります。
お客さんは価格ではなく必要性を見ている
お客さんが支出を見直す時に考えるのは、価格だけではありません。
これは今の自分に必要か。やめたら困るか。代わりはあるか。この人から買う理由はあるか。今後も続ける意味があるか。
こうした判断をしています。
つまり、安いから残るのではありません。必要だと思われるから残るのです。
この考え方は、以前書いた「いつか必要な商品を今欲しい商品に変える方法」にも通じます。商品は、ただ存在しているだけでは弱い。お客さんの中で「今の自分に必要だ」と意味づけされた時に、ようやく強くなります。
切られる商品は「なくても困らない」と思われている
お客さんに切られる商品には、共通点があります。
それは、商品が悪いことではありません。むしろ、品質は悪くないことが多いです。
問題は、お客さんの中で「これはなくても困らない」と位置付けられていることです。
同じ商品でも意味づけで残り方は変わる
たとえば、習い事で考えてみましょう。
子どもがピアノを習っている。でも親から見ると、「なんとなく楽しそうだから通わせている」程度なら、家計を見直した時にやめる候補になります。
一方で、そのピアノ教室が「子どもの自己肯定感を育てる場所」「学校以外で安心できる居場所」「集中力や表現力を伸ばす大切な時間」として認識されていたら、見え方は変わります。
同じピアノ教室でも、意味づけが変わると、切られにくくなるのです。
これは整体、サロン、講座、コンサル、士業、Web制作、コピーライティングでも同じです。
あなたの商品が「便利なサービス」「あればいいもの」「余裕がある時に使うもの」と見られているなら、景気が悪くなった時に弱い。
逆に、お客さんにとって「これがないと困る」「これをやめる方が損」「この人に相談できないと不安」と思われていれば、価格だけで判断されにくくなります。
不可欠な商品は、機能ではなく意味で残る
不可欠な商品になるには、機能を増やせばいいわけではありません。
もちろん、品質は大事です。成果も大事です。サポートも大事です。
でも、それだけでは足りません。
お客さんが「これは自分にとって何なのか」を理解できるようにする必要があります。
「何をしてくれるか」より「何を守ってくれるか」
たとえば、コピーライティングサービスを売る場合、「LPを書きます」だけでは、外注費として見られます。すると、景気が悪くなった時に「自分で書こうかな」「安い人に頼もうかな」と思われやすい。
しかし、「あなたの商品が本当に必要な人に伝わるように、売れる導線を言葉で整えるサービス」と伝えれば、意味が変わります。
さらに、「問い合わせが来ない原因を整理し、YouTube、メルマガ、LP、個別相談までの流れを作る」と言えば、単なる文章作成ではなく、売上に関わる仕組みとして見られます。
この違いは大きいです。
そもそも「何を売っている会社か分からない」状態では、お客さんに必要性を感じてもらうこともできません。何をしてくれるのか分からない商品は、不況時に真っ先に削られます。だからこそ、まずは一瞬で「誰に、何を、どう役立てるのか」が伝わる状態にしておく必要があります。
顧客との関係性が、最大の防衛策になる
ダン・ケネディは、不況時に守るべきものとして顧客との関係を重視しています。
ここでいう関係性とは、ただ仲良くすることではありません。
お客さんが「この人は自分のことを分かってくれている」と感じること。自分の状況に合わせて提案してくれること。困った時に思い出せる存在であること。新しい問題が出てきた時に、最初に相談したくなる相手であること。
これが関係性です。
小さな会社ほど関係性で残れる
大手チェーンは便利です。安いかもしれません。知名度もあります。
でも、個人店や小さな会社には、お客さん一人ひとりとの距離の近さがあります。
誕生日を知っている。好みを知っている。過去に買った商品を知っている。前回の相談内容を覚えている。こうした積み重ねは、不況時に強い武器になります。
お客さんが支出を削る時、単なる選択肢の一つなら切られます。
しかし、「あの人にはお世話になっている」「あの会社は自分のことを分かってくれている」「ここは残しておきたい」と思われていれば、最後まで残る可能性が高くなります。
値下げより先に、接触頻度と接触の質を見直す
売上が落ちた時、多くの人は新規集客に走ります。
もちろん、新規集客は必要です。ただ、今いるお客さんとの関係が薄いまま新規客だけを追いかけても、ビジネスは不安定になります。
まず見直すべきは、既存顧客との接触です。
忘れられた商品にお金は払われない
最近、いつ連絡しましたか。役立つ情報を届けていますか。新しい提案をしていますか。購入後にフォローしていますか。お客さんが今どんな悩みを抱えているか把握していますか。
これが抜けていると、商品は少しずつ忘れられます。
人は、忘れたものにお金を払い続けません。
だから、不況時ほど接触を増やす必要があります。ただし、売り込みを増やすという意味ではありません。お客さんが「この人は今の自分に必要な情報を届けてくれる」と感じる接触を増やすということです。
メール、LINE、ニュースレター、個別メッセージ、顧客向け特典、既存客限定セミナー。方法はいろいろあります。
大事なのは、接触するたびに「やっぱりこの人は必要だ」と思ってもらうことです。
高い商品でも残る理由を作る
高額商品ほど、不況時には不利に見えます。
でも、必ずしもそうではありません。
高い宝石が売れるのは、石そのものだけを売っているからではありません。特別な意味、贈る理由、所有する満足感、社会的な価値があるからです。価格そのものではなく、「なぜそれにお金を払うのか」という理由があるから買われます。
高額商品は価格の前に意味を伝える
11万円ウイスキーの事例も同じです。高いお酒として見れば、普通は買いにくい。けれど、限定性やストーリー、贈り物としての意味が加わると、「高いけれど欲しい」に変わります。
高額商品は、価格だけ見られたら弱いです。
だからこそ、価格の前に意味を伝える必要があります。
この商品は何を変えるのか。なぜ今必要なのか。やめるとどんな損があるのか。買うことで、どんな未来に近づくのか。なぜ他ではなく、あなたから買うべきなのか。
これらが伝わると、高額商品でも残る理由ができます。
逆に、意味が伝わらない高額商品は、不況時に真っ先に切られます。
不可欠な存在になるコピーの作り方
では、商品を不可欠な存在にするために、コピーでは何を書けばいいのか。
まず必要なのは、商品説明ではなく、お客さんの生活やビジネスの中でどんな役割を持つのかを言語化することです。
機能を意味に変える
たとえば、単に「文章を書きます」では弱い。
「売れない原因を言葉で整理し、必要な人に商品の価値が伝わる導線を作ります」と書く方が強い。
単に「整体をします」ではなく、「慢性的な疲れで仕事や家事の集中力が落ちている人が、毎日をラクに動ける状態に整えます」と書く。
単に「ピアノを教えます」ではなく、「子どもが自信を持って表現できる場所を作ります」と書く。
このように、機能を意味に変えるのです。
やめた時の損失を言葉にする
次に、お客さんが失うものを見せます。
放置すると何が起きるのか。安い代替品に変えると何を失うのか。今やめると、どんな不便や不安が戻ってくるのか。
もちろん、恐怖を煽りすぎる必要はありません。
ただ、お客さんが本当に困ることなら、きちんと言葉にした方がいいです。
最後に、「続ける理由」「選ぶ理由」「今動く理由」を作ります。
この3つがあると、商品は単なる支出ではなく、必要な投資に見え始めます。
あなたのビジネスにどう応用するか?
まず、自分の商品やサービスを見直してみてください。
お客さんから見て、それは「なくても困らないもの」になっていないでしょうか。
講座なら、ただ学べるだけで終わっていないか。コンサルなら、相談できるだけで終わっていないか。サロンなら、気持ちいいだけで終わっていないか。Web制作なら、きれいなホームページを作るだけで終わっていないか。
最後まで残る理由を書き出す
お客さんが支出を見直す時に、最後まで残したくなる理由を作る必要があります。
そのために、まず次の3つを書き出してみてください。
1つ目は、お客さんがあなたの商品をやめた時に困ることです。表面的な不便ではなく、生活や売上や人間関係にどう影響するかまで考えます。
2つ目は、お客さんがあなたを選び続ける理由です。価格、機能、実績だけでなく、関係性、理解度、提案力、安心感も含めて考えます。
3つ目は、あなたの商品が「選択肢の一つ」ではなく「不可欠な存在」になるために足りないものです。接触頻度なのか、顧客フォローなのか、見せ方なのか、商品設計なのかを見直します。
コピーで「残すべき理由」を伝える
LPやセールスコピーでは、商品内容だけを書かないことです。
お客さんにとって、なぜそれが必要なのか。やめると何を失うのか。続けることで何が守られるのか。今の時代に、なぜそれが重要なのか。
ここまで書いて初めて、商品は「支出」ではなく「残すべきもの」に変わります。
ダン・ケネディ 不況マーケティングから学べるのは、安売りの技術ではありません。
お客さんにとって、最後まで切られない存在になる技術です。
景気が悪い時ほど、商品はふるいにかけられます。便利なものは削られます。なんとなく続けていたものは止められます。代わりがきくものは、より安いものに置き換えられます。
だからこそ、あなたの商品は「安いから買う」ではなく、「これがないと困るから残す」と思われる必要があります。
売れる商品は、価格で残るのではありません。
意味で残ります。
そして、その意味をお客さんに伝えるのが、コピーライティングの仕事です。


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