ドミノピザのマーケティングで面白いのは、悪い口コミを隠さなかったことです。普通の企業なら、自社商品への悪評はできるだけ見せたくありません。「生地が段ボールみたい」「ソースがケチャップみたい」なんて言われたら、広告からは絶対に消したいはずです。
ところが、ドミノ・ピザは逆のことをしました。
お客さんから言われていた悪い口コミを、あえて広告に出したのです。
ただし、ここで大事なのは「悪評を出したから売れた」という単純な話ではありません。
ドミノ・ピザは悪い口コミを見せたうえで、本当に商品を作り直しました。
だから、ただの自虐ではなく「信頼を取り戻すストーリー」になったのです。
ドミノ・ピザは味への不満を持たれていた
2000年代後半のドミノ・ピザは、決して順調とは言えない状態でした。消費者の評価は厳しく、フォーカスグループでは「生地が段ボールみたい」「ソースがケチャップみたい」といった声まで出ていたと紹介されています。
普通なら、こんな声は表に出したくありません。
企業は自分たちの商品を良く見せたいものです。
おいしい。
人気がある。
選ばれている。
満足されている。
そう伝えたくなるのが自然です。
でも、もしお客さんがすでに不満を持っているなら、きれいな言葉だけを並べても信じてもらえません。
「いやいや、実際まずいって言われてるやん」
そう思われたら、広告は届かない。
ドミノ・ピザがすごかったのは、そこで逃げなかったことです。
悪い口コミを広告に出した
ドミノ・ピザは「Pizza Turnaround」というキャンペーンで、お客さんからの厳しい声を広告の中に出しました。
生地がよくない。
ソースがよくない。
味に満足できない。
そうした声を隠すのではなく、「私たちはこう言われていました」と見せたのです。
これはかなり勇気のいる広告です。
なぜなら、自社の弱点を自分から広めることになるからです。
でも、ドミノ・ピザには狙いがありました。
ただ「新しくなりました」と言っても、お客さんは信じない。
だから先に、悪い口コミを認めた。
そのうえで「だから作り直しました」と伝えた。
この順番だったから、メッセージに説得力が出たのです。
作り直したから、もう一度試す理由ができた
ドミノ・ピザの広告が強かったのは、悪い口コミを見せただけで終わらなかったところです。
本当にレシピを見直しました。
クラスト。
ソース。
チーズ。
味そのものを作り直した。
つまり、広告の中身は「私たちは叩かれています」ではありません。
「私たちは叩かれました。その声を聞きました。だから変えました」
このストーリーです。
ここが大事です。
悪い口コミを認めるだけなら、ただの自虐になります。
でも、改善とセットになると話が変わります。
お客さんはこう思います。
本当に変わったのかもしれない。
一回くらい食べてみようかな。
前と違うなら試してみたい。
この「もう一度試す理由」を作ったことが、ドミノ・ピザの復活につながったのです。
売上回復につながった
このキャンペーンは、数字にも表れました。
ドミノ・ピザの2010年第1四半期決算では、米国内の既存店売上が前年同期比14.3%増加したと発表されています。会社側は、新しく作り直したピザの導入によって来店客数が増えたことを理由として説明しています。
つまり、悪い口コミを広告に出しただけではありません。
悪評を認める。
商品を作り直す。
その変化を広告で見せる。
もう一度食べる理由を作る。
この流れが、売上回復につながったのです。
ドミノ・ピザのすごさは、弱点を消したことではありません。
弱点を「変わるきっかけ」として見せたことです。
悪評は隠すほど疑われることがある
多くの企業は、悪い口コミを怖がります。
もちろん、悪評はないほうがいいです。
でも、すでにお客さんが不満を持っているなら、それを無視しても信頼は戻りません。
むしろ、企業だけが「問題ありません」と言い続けると、余計に疑われます。
本当に聞いているのか。
分かっているのか。
改善する気があるのか。
そう思われてしまう。
ドミノ・ピザは、そこを逆手に取りました。
お客さんの不満を先に認める。
そのうえで、改善したことを見せる。
だから「この会社は聞いてくれている」と感じてもらえたのです。
これは、ゴディバが「義理チョコをやめよう」と言って、お客さん側の本音を先に代弁した事例にも似ています。売り手の都合を押しつけるのではなく、先にお客さんの気持ちを言葉にすると、メッセージは届きやすくなります。
悪い口コミは「改善」とセットで使う
ただし、この事例をそのまま真似するのは危険です。
悪い口コミを見せれば売れる、という話ではありません。
大事なのは、改善とセットにすることです。
「こんなに悪く言われています」
これだけでは、ただ評価を下げるだけです。
必要なのは、
悪い口コミを認める。
なぜそう言われたのかを受け止める。
実際に商品やサービスを改善する。
その変化を伝える。
もう一度試す理由を作る。
この順番です。
ドミノ・ピザが復活できたのは、悪評を広告にしたからではありません。
悪評を、改善のストーリーに変えたからです。
これは、ファブリーズが売れなかった原因を見直し、使うタイミングを変えて広がった話にも通じます。商品そのものだけでなく、「どう見せるか」「どう使ってもらうか」を変えることで、売れ方は大きく変わります。
なぜ、ファブリーズは使うタイミングを変えただけで売れたのか?
この事例から分かること
ドミノ・ピザのマーケティングから分かるのは、信頼を取り戻すには、きれいごとだけでは足りないことがあるということです。
お客さんが不満を持っているなら、まずその声を認める。
そして、本当に改善する。
そのうえで、変わったことを伝える。
この順番があるから、もう一度信じてもらえる。
悪い口コミは、たしかに怖いものです。
でも、隠すだけでは信頼は戻りません。
ドミノ・ピザは、自分たちへの厳しい声を隠さず見せました。そして、それをきっかけに商品を作り直しました。
だから、悪評はただのマイナスで終わらなかった。
「本当に変わったのかもしれない」と思わせる、復活のストーリーになったのです。
売れる商品には、必ず理由があります。
そしてその理由は、完璧に見せることではなく、失敗を認めて変わる姿勢に隠れていることもあるのです。
ドミノ・ピザは、悪い口コミを広告にしたのではありません。
悪い口コミを、信頼を取り戻す物語に変えたのです。


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