なぜ、赤字まみれの巨大企業が復活できたのか?
誰もが知る大企業の日立製作所。かつて彼らは深刻な経営危機に陥りました。リーマンショックの時のことです。なんと、7,873億円もの大赤字を出しました。これは国内の製造業で史上最悪の数字です。
当時のニュースは大騒ぎでした。「巨大企業が倒産するかもしれない」と囁かれたほどです。しかし現在、日立は過去最高益を叩き出すまでに復活しています。見事なV字回復ですよね。
一体、彼らはどうやってこの危機を乗り越えたのでしょうか。もちろん、魔法を使ったわけではありません。画期的な新しいテレビを発明したわけでもありません。
彼らが行ったのは、非常に冷酷で強力なマーケティングの決断でした。つまり「過去の栄光を捨てる」ということです。
今回は、日立製作所が絶体絶命のピンチから復活した理由を解説します。彼らのマーケティング視点を紐解いていきましょう。
日立のマーケティングが大成功した3つの理由
日立の復活劇には、痛みを伴う壮絶なドラマがあります。なぜなら、彼らは自分たちの「一番の看板」を自らへし折ったからです。
1. 過去の栄光だった「モノづくり」を捨てた
日立といえば、テレビや白物家電のイメージが強いですよね。日本を代表するハードウェア企業でした。しかし、彼らは大きな決断を下します。それは、祖業である家電などの事業を切り離すことでした。
長年培ってきたブランドの顔です。それを手放すのは、血を流すような痛みだったはずです。しかし、安い海外製品との価格競争に巻き込まれていました。このまま同じ市場で戦えば、会社が沈むのは明白だったのです。
そこで彼らは、潔く過去の栄光を捨てました。自らの失敗や弱さを認めて方針を変える決断は、非常に勇気がいります。これは、自社のピザがマズいと認めて大逆転したドミノ・ピザのマーケティングの事例にも通じる強さがあります。
2. 「モノ売り」から「仕組み売り」へ転換した
テレビを作るのをやめた日立。では、何でお金を稼ぐことにしたのでしょうか。彼らが選んだのは「社会インフラとITシステム」の領域でした。
たとえば、鉄道のシステムや発電所の管理などです。これらは、単に機械という「モノ」を売る商売ではありません。機械とITを組み合わせて、顧客の課題を解決する「仕組み」を売る商売です。
仕組みを売るビジネスは、一度契約すれば継続的な利益を生み出します。つまり、価格競争から抜け出すことができるのです。この「モノ売り」から「仕組み売り」への鮮やかな転換は、年会費で莫大な利益を出すコストコのビジネスモデルにも通じる強力な戦略です。
3. 「選択と集中」で戦う場所を極限まで絞った
日立の復活劇を支えた最大の要因。それは「選択と集中」という戦略です。何でも屋になることをやめました。そして、勝てる領域にだけリソースを全集中させたのです。
大企業は資金があるため、つい色々な事業に手を出したくなります。しかし、すべて中途半端になれば、どの分野でも一番にはなれません。だからこそ彼らは、社会インフラとITシステムだけに命を懸けました。
戦う場所を絞り、他社が真似できない強みを作る。このアプローチは、マクドナルドとの真っ向勝負を避けて大人向けに絞ったモスバーガーのマーケティング戦略にも似ています。勝てない場所からは撤退し、勝てる場所で圧倒的な一番になる戦略です。
あなたのビジネスにどう応用するか?
日立のマーケティング戦略から私たちが学べること。それは「マーケティングとは、何を『やらないか』を決めることである」という事実です。
もしあなたが、売上に悩んでいるとします。そのとき、新しい商品を増やそうとしていませんか。あるいは、新しい資格を取ってメニューを追加しようとしていませんか。実は、それは逆効果になることが多いのです。
まずは一度、このように自分へ問いかけてみましょう。
「今持っている商品の中で、思い切って捨てられるものはないか?」
アレもコレもできます、という人は誰からも選ばれません。勇気を出して商品を絞り込んでください。そして、自分が最も得意な「たった一つの強み」に全集中するのです。日立がテレビを捨てたように、あなたも不要なメニューを捨ててみてください。
捨てることで、専門性が際立ちます。結果として、より高い単価で商品が売れるようになります。ぜひ、あなたのビジネスでも「選択と集中」を取り入れてみてください。

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