なぜ、赤字続きだったUSJは「映画だけのテーマパーク」をやめてV字回復したのか?

USJが映画だけのテーマパークから感情を売るエンタメ空間へ転換してV字回復した理由を解説する記事のアイキャッチ画像 V字回復

USJのV字回復マーケティングは、「お客さんが本当に欲しいものは何か?」を考えるうえで、とてもわかりやすい事例です。今のUSJを見ると、赤字続きで苦しんでいた時期があったとは信じにくいかもしれません。ハリー・ポッター、任天堂、アニメコラボ、ハロウィンイベントなど、今では「行くたびに何か新しいことがあるテーマパーク」という印象があります。

でも、かつてのUSJは「映画のテーマパーク」という看板に縛られていた時期がありました。もちろん、映画の世界を体験できること自体は魅力です。ただ、日本で幅広い人を集め続けるには、それだけでは少し狭かった。

なぜなら、お客さんが本当に欲しかったのは「映画の世界に入ること」だけではなかったからです。

お客さんは、感情を動かされに来ていました。ワクワクしたい。叫びたい。驚きたい。家族で笑いたい。友達と写真を撮りたい。日常を忘れたい。USJのV字回復は、この本質に気づいたところから始まったと見ると、とてもわかりやすくなります。

「映画好きだけの場所」から抜け出した

USJの再建でよく語られるのが、森岡毅さんのマーケティング改革です。2010年に森岡さんがUSJに入り、マーケティングを軸にした改革が進みました。日経の記事でも、USJのV字回復の勝因として「映画専門パークからの脱却」が紹介されています。

ここで大事なのは、映画を否定したわけではないということです。

映画の魅力は残しながらも、「映画でなければならない」という縛りを外した。ここが大きい。

ハリー・ポッターは映画の世界観と相性がいい。一方で、アニメ、ゲーム、ハロウィン、季節イベントは、必ずしもユニバーサル映画だけに限定されるものではありません。でも、お客さんが熱狂するなら、それはUSJにとって大きな価値になります。

つまり、USJは「映画のテーマパーク」から「最高に感情が動くエンタメ体験の場所」へと意味を変えたのです。

これは、以前書いたドミノ・ピザのV字回復マーケティングにも通じます。ドミノ・ピザも、ただピザを売り直したのではありません。「まずい」という弱点を正面から認め、顧客の感情を動かすストーリーに変えました。USJも同じです。商品そのものではなく、お客さんの感情に合わせて売り方を変えたのです。

理由1「映画を見たい人」ではなく「感情を動かしたい人」に広げた

USJが「映画好き」だけを相手にしていたら、市場は限られます。映画好きは来てくれます。でも、日本全国の家族、学生、カップル、友達グループを何度も呼び込むには、それだけでは足りません。

そこでUSJは、ターゲットを広げました。

お客さんは映画ではなく非日常を求めていた

映画を知っている人だけでなく、楽しい場所に行きたい人。非日常を味わいたい人。友達と盛り上がりたい人。子どもを喜ばせたい親。SNSで思い出を残したい若者。

こうした人たちに向けて、体験の幅を広げたわけです。

これはマーケティングでかなり重要です。商品が売れないとき、多くの人は「もっと商品の魅力を伝えよう」とします。でも、本当に必要なのは、そもそも誰に向けて売っているのかを見直すことかもしれません。

USJは「映画好きに映画の世界を見せる場所」ではなく、「幅広い人の感情を揺さぶる場所」になりました。このターゲットの広げ方が、V字回復の大きな要因です。

理由2「機能」ではなく「体験」を売った

映画のテーマパークという打ち出しは、映画好きには魅力的です。好きな作品の世界観に入り込めたり、映画を題材にしたアトラクションを楽しめたりするからです。ただ、その魅力は「その映画を知っている人」には強く刺さる一方で、映画に詳しくない人には少し伝わりにくい面もあります。

でも、それだけだと「その映画を知らない人」には刺さりにくい。

一方で、「叫べる」「泣ける」「興奮できる」「友達と盛り上がれる」「子どもが大喜びする」という体験は、映画を知らなくても伝わります。

人は説明よりも感情で動く

USJが強くなったのは、この体験価値を前面に出したからです。

たとえば、ハロウィンイベントはわかりやすい事例です。お客さんは、ホラー映画の知識を学びに行くわけではありません。怖がりたい。叫びたい。友達と笑いたい。非日常の空気を浴びたい。その感情があるから行きたくなります。

これはレッドブルのマーケティングにも似ています。レッドブルは、単なるエナジードリンクではなく、「もうひと踏ん張りしたい瞬間」を取りました。USJも、単なる映画施設ではなく、「感情が爆発する瞬間」を取りに行ったのです。

商品そのものより、使用後の感情を売る。

これはコピーライティングでもめちゃくちゃ大事です。

理由3「何でもあり」にしたことで、何度も行く理由ができた

テーマパークにとって大事なのは、初回来場だけではありません。一度来た人に、もう一度来てもらうことです。

もしUSJが映画だけにこだわり続けていたら、新しい企画の幅はかなり狭くなっていたはずです。でも、映画以外のコンテンツも取り入れるようになったことで、季節イベント、アニメコラボ、ゲームコラボ、家族向けエリアなど、何度も来る理由を作れるようになりました。

季節ごとに行く理由を作った

USJは2011年度と2012年度に入場者数を2年連続で100万人以上伸ばし、2013年度には開業初年度以来となる1000万人以上を記録したと発表しています。

さらに、今のUSJはハリウッド映画だけではなく、日本のアニメやゲームなど幅広いコンテンツも取り込むパークになっています。公式の親会社側の発信でも、USJは「ストーリーテリング」と「NO LIMIT!」体験を重視するパークとして紹介されています。

これは、単にひとつの大型アトラクションが当たっただけではありません。お客さんに「また行きたい」と思わせる理由を、何度も作った結果です。

この考え方は、キットカットの受験マーケティングにも通じます。キットカットは、チョコレートを食べる理由だけでなく、受験生を応援する理由を作りました。USJも同じです。ただ遊びに行く場所ではなく、季節ごと、仲間ごと、目的ごとに行く理由を作ったのです。

売れない原因は「こだわり」がズレていることかもしれない

USJの事例で面白いのは、こだわりを捨てたから復活したように見えるところです。

ただし、本当に捨てたのは「こだわり」そのものではありません。捨てたのは、お客さんが求めていないこだわりです。

作り手は、つい自分たちのこだわりを大事にします。作り手は、つい自分たちのこだわりを大事にしすぎます。たとえば「うちは映画のテーマパークだから、映画以外の企画は入れるべきではない」「この商品はこういうジャンルだから、こう見せなければならない」と考えてしまう。けれど、そのこだわりがお客さんにとって魅力になっているとは限りません。

でも、お客さんはそこまで気にしていないことがあります。

お客さんが欲しいのは、肩書きではありません。ジャンルでもありません。自分にとってどんな良いことがあるのかです。

楽しいのか。ラクになるのか。安心できるのか。誰かに話したくなるのか。自分が変われるのか。

ここを見ないまま、作り手のこだわりだけを押し出すと、商品は売れにくくなります。

これは無印良品のマーケティングとも逆方向でつながります。無印良品は、派手なブランド主張を削ることで「自分の生活になじむ」という価値を作りました。USJは、映画だけのこだわりを緩めることで「誰でも感情が動く場所」という価値を作りました。どちらも、お客さんの感じ方に合わせてブランドの見せ方を調整しているのです。

あなたのビジネスにどう応用するか?

USJのV字回復から学べることは、商品やサービスは「作り手の定義」で売るのではなく、「お客さんの欲しい感情」で売るべきだということです。

USJは、映画を捨てたわけではありません。映画の魅力は残しながらも、「映画でなければならない」という枠を外しました。そして、お客さんが本当に求めていたワクワク、驚き、興奮、非日常、思い出という感情にフォーカスしました。

これは個人事業主やコピーライターにもそのまま使えます。

たとえば、「文章を書きます」だけでは弱いです。お客さんが欲しいのは文章そのものではありません。問い合わせが増えること。商品が売れること。自分の価値が伝わること。説明会で成約できることです。

講師なら「講座を売る」だけではなく、「受講生が自信を持って一歩踏み出せる体験」を売る。コンサルなら「ノウハウを教える」だけではなく、「迷いが消えて行動できる状態」を売る。商品ではなく、その先にある感情を見せることが大事です。

売れないときほど、自分に聞くべきです。

自分は商品を説明しているだけではないか。お客さんが本当に欲しい感情を見せられているか。作り手のこだわりを、お客さんのベネフィットに変換できているか。

USJの復活は、その答えを教えてくれる事例です。

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この記事を書いた人

   

セールスコピーライター てらじまたくろう

高額でも御社の商品を買いたい人を特定し、集め、高値で販売し、売上に貢献するセールスコピーライター。LP、ステップメール、セールスレター、説明会台本、AI集客動画まで、売れる導線を一気通貫で設計。このブログでは、実際に売れた商品や広告を題材に、「なぜ売れたのか?」をマーケティング視点で解説しています。

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