食パンは、ふつう安さで選ばれやすい商品です。スーパーやコンビニに行けば、手軽に買える食パンが並んでいます。毎朝食べるものだからこそ、多くの人は「できれば安く買いたい」と考えます。
ところが、その常識とはまったく逆の場所で売れた食パンがあります。
乃が美の高級「生」食パンです。
普通の食パンより高い。
他社より4倍高いとも言える。
それでも、一時は行列ができるほど多くの人に選ばれました。なぜ、毎日食べる日用品のような食パンが、ここまで高い価格でも売れたのか。答えは、乃が美が「安く食べる食パン」ではなく、「手土産になる高級食パン」として見せたからです。
自分の朝食用なら高く感じる。
でも、誰かに渡すちょっとした手土産なら、むしろちょうどいい。
この買う場面の変化が、乃が美の食パンを「高すぎる商品」ではなく「一度食べてみたい商品」に変えたのです。
これで冒頭の重複も消えるし、「なぜ?」を残したまま本文に入れる。
食パンは本来、安さで比べられやすい商品だった
食パンは、かなり価格比較されやすい商品です。
スーパーに行けば、いくつもの食パンが並んでいます。大手メーカーの商品もあれば、プライベートブランドの商品もあります。特売になることも多く、消費者からすれば「いつもの食パンを安く買う」感覚になりやすい。
つまり、食パンは本来、日用品です。
日用品になると、どうしても安さで比べられます。
昨日買った食パンより高い。
隣の商品より高い。
同じように見えるのに、なぜ高いのか分からない。
こう見られると、高価格の商品は不利です。
普通に考えれば、1斤800円前後の食パンはかなり高い。毎日食べるものとして見ると、「ちょっと高すぎる」と感じる人もいるはずです。
では、なぜ乃が美はその価格でも広がったのでしょうか。
理由は、食パンの見え方を変えたからです。
乃が美は「柔らかい食パン」だけを売らなかった
乃が美の高級「生」食パンが生まれるきっかけには、老人ホームでの出来事があったとされています。代表の阪上雄司さんが老人ホームを訪れた際、高齢者がパンの耳を食べにくそうにしている姿を見て、耳までやわらかい食パンを作ろうと考えたという話です。
ここだけを見ると、乃が美の価値は「やわらかい食パン」です。
でも、やわらかいだけでは、ここまで広がらなかったかもしれません。
なぜなら、「やわらかい食パン」は機能だからです。
機能は大事です。
でも、機能だけで売ろうとすると比較されます。
どれくらいやわらかいのか。
他の食パンと何が違うのか。
本当に800円出す価値があるのか。
そこで乃が美は、ただの「やわらかい食パン」ではなく、「高級『生』食パン」という見え方を作りました。
この名前には、ただの食パンとは違う響きがあります。
高級。
生。
専門店。
この言葉が重なることで、いつもの朝食用の食パンではなく、少し特別な食パンとして受け取られやすくなったのです。
自分用では高くても、贈り物なら高く感じにくい
乃が美が面白いのは、「食パンを買う場面」を変えたことです。
自分の朝食用に食パンを買うなら、800円は高く感じます。
でも、誰かへの手土産ならどうでしょうか。
800円の手土産は、むしろ高すぎません。
ケーキや焼き菓子を買うより手軽で、相手にも渡しやすい。しかも食パンなら家族で食べられるし、甘いものが苦手な人にも渡しやすい。
ここで価格の意味が変わります。
自分用の日用品として見ると高い。
でも、人に渡すちょっとした贈り物として見ると、ちょうどいい。
この視点の変化が大きいのです。
乃が美は2013年に創業し、当初は「パンを一本800円で売る」と言うと驚かれるような状態だったとされています。それでも最初の店舗を大阪・上本町の路地裏に構え、口コミで広がっていったという話も紹介されています。
つまり、乃が美は安売りで一気に広げたのではありません。
「高いけど、渡したくなる。けど、一度食べてみたい」
「高いけど、話題になる」
この状態を作ったから広がったのです。
「高級 生 食パン」という名前が価値を作った
乃が美のすごいところは、商品の名前そのものにもあります。
高級「生」食パン。
この言葉を聞くと、普通の食パンとは違う感じがします。
ただの食パンではなく、専門店で買う特別なもの。
焼かずにそのまま食べたくなるもの。
ふわふわで、しっとりしていて、少し贅沢なもの。
そんなイメージが浮かびます。
名前は、ただのラベルではありません。
商品の見え方を作るコピーです。
これは、鼻セレブが単なる保湿ティッシュではなく、「鼻をいたわるちょっと贅沢なティッシュ」として見え方を変えた話にも似ています。
もし乃が美が「やわらか食パン」という名前だけで売っていたら、ここまで特別感は出なかったかもしれません。
「高級」「生」「専門店」という言葉によって、食パンのカテゴリーそのものを少し上にずらした。
これが強かったのです。
高い価格は、価値を伝えるサインにもなる
高い価格は、普通なら売れにくい理由になります。
でも、見せ方が整っていれば、高いことが価値を伝えるサインになることがあります。
乃が美の食パンも、ただ高いだけなら売れません。
でも、耳までやわらかい。
そのまま食べたくなる。
手土産になる。
専門店で買う特別感がある。
こうした理由が重なると、価格の見え方が変わります。
これは、売れなかった宝石が価格を2倍にした途端に売れた話にも通じます。価格は単なる数字ではなく、お客さんが価値を判断するための情報になることがあります。
なぜ、売れなかった宝石は「価格を2倍」にした途端に売れたのか?
もちろん、高くすれば何でも売れるわけではありません。
高い価格には、高いと思われない理由が必要です。
乃が美の場合、その理由が「手土産になる高級食パン」というコンセプトにありました。
高額でも売れる商品には理由がある
高くても売れる商品は、ただ品質が良いだけではありません。
品質の良さが、ちゃんと伝わる形になっている必要があります。
たとえば、1本11万円のウイスキーが短時間で完売した事例もそうです。
価格だけを見ると高い。
でも、希少性やストーリー、限定性が伝わると、「高いから買わない」ではなく「高いけど欲しい」に変わることがあります。
なぜ、1本11万円もするウイスキーが、たった4分で完売したのか?
乃が美も同じです。
ただの食パンとして見ると高い。
でも、手土産になる高級食パンとして見ると、価格の意味が変わる。
つまり、商品そのものだけでなく、買う理由と使う場面を変えたのです。
この事例から分かること
乃が美のマーケティングから分かるのは、商品は「何として売るか」で価値が変わるということです。
同じ食パンでも、日用品として売れば安さで比べられます。
でも、手土産として売れば、価格の見え方が変わります。
自分用なら高い。
でも、贈り物ならちょうどいい。
この違いが、乃が美の高級食パンを広げた大きな理由です。
乃が美は、食パンそのものを変えただけではありません。
食パンが使われる場面を変えました。
自分で安く食べるものから、人に渡せるちょっとした贈り物へ。
この見せ方の変化が、高い食パンを選ばれる商品に変えたのです。
売れる商品には、必ず理由があります。
そしてその理由は、商品の中身だけではなく、「どんな場面で買われる商品にするか」にも隠されています。
乃が美は、食パンを売ったのではありません。
手土産になる体験を売ったのです。


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