なぜ、受験シーズンになるとキットカットが売れるのか知っていますか?
受験シーズンになると、スーパーやコンビニでキットカットを見かける機会が増えます。受験生本人が買うこともあれば、家族や友人が「頑張ってね」という気持ちを込めて渡すこともあります。
でも、よく考えると不思議です。
キットカットは、もともと普通のチョコレート菓子です。参考書でもなければ、合格祈願のお守りでもありません。食べたからといって、点数が上がるわけでもありません。
それなのに、なぜ多くの人は受験シーズンになるとキットカットを思い出すのでしょうか。おいしいからでしょうか。手軽に買えるからでしょうか。赤いパッケージが目立つからでしょうか。
もちろん、それも理由の一部です。でも、それだけではありません。キットカットが受験シーズンに売れる最大の理由は、商品そのものではなく、商品に乗った「意味」にあります。
つまり、キットカットはチョコレートとして売れているのではなく、「きっと勝つ」という応援のメッセージとして売れているのです。
キットカットは「お菓子」ではなく「応援」になった
キットカットが受験と結びついた理由として有名なのが、名前の響きです。「キットカット」という音が、「きっと勝つ」や九州方言の「きっと勝つとぉ」に近いことから、受験生への応援商品として広がったと言われています。日本ではキットカットが試験前の学生に贈られる縁起物として知られており、ネスレと日本郵便が2009年に、メッセージを書いて郵送できるキャンペーンを展開した事例もあります。
ここで大事なのは、商品そのものを大きく変えたわけではないことです。チョコレートはチョコレートです。でも、「きっと勝つ」という意味が乗った瞬間、ただのお菓子ではなくなりました。
マーケティングでは、商品は機能だけで選ばれるわけではありません。むしろ、人は「その商品を買う意味」に反応します。キットカットの場合、それは「甘いものを食べる」ではなく、「応援の気持ちを渡す」でした。
だから、受験シーズンのキットカットは強いのです。
自分で食べる商品から、誰かに渡す商品になった
キットカットが受験シーズンに売れやすいもう1つの理由は、買う人が増えたことです。普通のお菓子なら、自分が食べたい時に買います。しかし、受験のお守りになると、買う人は受験生だけではありません。
親が子どもに渡す。友人が友人に渡す。先生が生徒に渡す。塾の先生が受験生に配る。
つまり、キットカットは「自分用のお菓子」から「誰かを応援するための贈り物」になったのです。
これは、売れる商品を考えるうえでかなり重要です。商品が誰かに贈られる理由を持つと、購入シーンが一気に増えます。しかも受験シーズンは、「何か応援してあげたい」という気持ちが生まれやすい時期です。
でも、本物のお守りを渡すほど重くはしたくない。高いプレゼントを渡すのも違う。そんな時、キットカットはちょうどいい存在になります。
安い。手軽。渡しやすい。しかも「きっと勝つ」という意味がある。
このバランスが絶妙なのです。
パッケージがメッセージを届ける道具になった
キットカットの受験マーケティングが面白いのは、パッケージまで「応援の道具」になっていることです。
ただ商品を渡すだけなら、相手に気持ちが伝わりにくい場合があります。でも、パッケージにメッセージを書けるようにすると、商品はただの包装ではなく、気持ちを届けるメディアになります。先ほど触れた日本郵便とのキャンペーンでは、メッセージを書いたキットカットを郵送できる仕組みも作られました。
これは、コピーライティングの視点でもかなり学びがあります。
売れる言葉とは、かっこいいキャッチコピーだけではありません。お客さんが「これを買う理由」「これを渡す理由」「これを選ぶ理由」を作る言葉です。
キットカットは、「おいしいチョコレートです」と言っただけでは、ここまで受験シーズンの商品にはならなかったはずです。でも、「きっと勝つ」という意味が乗ったことで、買う理由が生まれました。さらに、メッセージを書けるパッケージによって、渡す理由も生まれました。
商品そのものではなく、商品をめぐる体験が設計されているのです。
この事例から学べること
キットカットの事例から学べるのは、商品は「意味づけ」で売れ方が変わるということです。
同じチョコレートでも、「おいしいお菓子」として売るのか、「受験生を応援する気持ちを届けるもの」として売るのかで、選ばれ方は変わります。
これは、どんな商品にも応用できます。
たとえば、整体なら「体をほぐします」だけではなく、「明日からまた頑張れる体に戻します」と言えるかもしれません。セミナーなら「知識を教えます」ではなく、「迷っていた行動に踏み出すきっかけを作ります」と言えるかもしれません。コンサルなら「アドバイスします」ではなく、「社長の頭の中にある価値を、売れる形に整理します」と言えるかもしれません。
大事なのは、商品説明を増やすことではありません。
お客さんにとって、その商品がどんな意味を持つのかを見つけることです。
キットカットが受験シーズンに売れる理由は、チョコレートが特別だからではありません。「きっと勝つ」という言葉によって、応援の気持ちを渡せる商品になったからです。
売れる商品には、必ず理由があります。そして、その理由は商品スペックの中だけではなく、お客さんの心の中にあります。


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