商品やサービスを紹介しようとすると、つい事実を並べたくなります。何を提供しているのか。どんな機能があるのか。価格はいくらなのか。どんな条件なのか。もちろん、それらは大切です。
でも、事実を並べるだけでは、人の心は動きにくいです。
特に、求人広告や講座、コンサル、サービスのように、読者が「参加するかどうか」を考える商品では、条件だけを見せても弱いことがあります。
仕事内容、勤務時間、給与、応募条件。
これだけでは、ただの募集です。
しかし、同じ内容でも見せ方を変えると、読者の中でまったく違う意味になります。
その代表例としてよく語られるのが、ブルース・バートンの求人広告です。
見出しは、「A wonderful two years’ trip at full pay – but only men with imagination can take it.」
日本語にすると、「給料をもらいながら、素晴らしい2年間の旅へ。ただし、想像力のある男だけが参加できる」という意味です。この広告は、7年間掲載された見出しとして紹介されています。
ここで面白いのは、求人を「仕事」として見せていないことです。
「給料付きの2年間の旅」と見せています。
つまり、ただの求人広告を、読者が参加したくなるオファーに変えているのです。
コピーは、事実をそのまま書くだけでは弱い
多くのコピーが弱くなる理由は、事実をそのまま説明してしまうことです。
たとえば、求人広告ならこうなります。
営業職募集。
勤務期間2年。
給与あり。
想像力のある人歓迎。
これでも情報としては間違っていません。
ただ、読みたいとは思いにくいです。
条件は伝わりますが、読者の想像力は動きません。
読者が知りたいのは「それで自分はどうなるか」
人は、商品や仕事そのものに反応しているようで、実はその先にある意味に反応しています。
この仕事に参加したら、自分はどんな経験ができるのか。
この講座を受けたら、自分はどう変われるのか。
この商品を買ったら、どんな気持ちになれるのか。
このサービスを使うと、どんな未来に近づけるのか。
ここが見えないと、コピーはただの説明になります。
だから、売れるコピーでは「何をするか」だけでなく、「それは読者にとって何を意味するのか」まで変換する必要があります。
「仕事」を「旅」に変えると、読者の想像力が動く
ブルース・バートンの広告がうまいのは、「仕事」を「旅」に変えたところです。
仕事と言われると、義務や作業を想像します。
でも、旅と言われると、冒険、成長、新しい出会い、未知の経験を想像します。
同じ2年間でも、「2年間働く」と「2年間の旅に出る」では、受け取られ方がまったく違います。
言葉を変えると、意味が変わる
コピーライティングでは、商品そのものを変えられない場面が多くあります。
求人なら、仕事内容は大きく変えられないかもしれません。講座なら、カリキュラムは決まっているかもしれません。サービスなら、提供内容はすでに決まっているかもしれません。
それでも、言葉の切り取り方は変えられます。
たとえば、求人を「労働」と見せるのか、「成長の機会」と見せるのか。
講座を「勉強」と見せるのか、「自分の商品を売れる形に整える時間」と見せるのか。
コンサルを「相談」と見せるのか、「迷っている判断を整理する場」と見せるのか。
この変換ができると、コピーは一気に強くなります。
以前書いた[ニトリ 採用マーケティングの記事]でも、採用は会社説明だけではなく、「ここで働く未来」を見せることが大事だと書きました。求人広告も同じで、仕事内容だけを見せるのではなく、そこで得られる経験や未来を見せる必要があります。
「Full Pay」で不安を消している
この見出しは、ただロマンを語っているだけではありません。
「Full Pay」という言葉が入っています。
つまり、給料が出ると伝えているのです。
ここが大事です。
「素晴らしい2年間の旅」だけなら、少し怪しく見えるかもしれません。夢はあるけれど、現実味が足りない。読者は「それで生活はできるのか?」と不安になります。
そこで「Full Pay」が効いています。
魅力だけでなく、安心材料も入れる
良いコピーは、夢だけを見せません。
読者が感じる不安も先回りして消します。
講座なら、「初心者でもついていけるのか」
コンサルなら、「自分の商品にも使えるのか」
高額商品なら、「払った金額に見合う価値があるのか」
求人なら、「生活できる給料は出るのか」
こうした不安を放置したまま、魅力だけを語っても読者は動きません。
だから、オファーには夢と現実の両方が必要です。
「素晴らしい旅」で心を動かし、「給料付き」で不安を消す。
この組み合わせが強いのです。
11万円ウイスキーのような高額商品の事例でも、ただ「高級です」と言うだけでは弱いです。限定性、ストーリー、贈る意味など、価格に対する納得材料があるから、読者は「高いけれど欲しい」と感じられます。
「想像力のある人だけ」が、読者を選別している
この見出しのもうひとつの強さは、「only men with imagination」という条件です。
誰でも歓迎していません。
想像力のある人だけ。
この言い方によって、読者の中に小さな挑戦が生まれます。
「自分は想像力のある側だろうか」
「自分なら参加できるかもしれない」
「普通の人向けではないなら、逆に気になる」
こういう感情が動きます。
誰でも歓迎すると、欲しくならない
多くのコピーは、対象を広げすぎます。
誰でもできます。
どんな人にもおすすめです。
初心者から上級者まで対応しています。
すべての業種に使えます。
これらは一見よさそうですが、読者の心には刺さりにくくなります。
人は、自分に向けられている言葉に反応します。
そして、少しだけ選ばれている感覚にも反応します。
「想像力のある人だけ」という条件は、読者を狭めているようで、実は読者の自尊心を刺激しています。
この広告は、読者にこう問いかけているのです。
あなたには、この旅に参加するだけの想像力がありますか?
普通の商品をオファーに変える3つの質問
ここからは、自分の商品やサービスに応用する方法です。
普通の商品説明を、参加したくなるオファーに変えるには、次の3つを考えると分かりやすいです。
それは読者にとって、どんな体験になるのか?
まず、商品を体験に変換します。
講座なら、ただの学習ではありません。自分の商品や発信を見直す時間かもしれません。
コンサルなら、ただの相談ではありません。頭の中で散らかっていた問題を整理し、次にやることが見える時間かもしれません。
求人なら、ただの仕事ではありません。新しい能力を身につけ、これまで知らなかった世界に入る経験かもしれません。
この変換ができると、コピーは説明からオファーに変わります。
参加すると、どんな未来に近づくのか?
次に、未来を見せます。
お客さんは、商品そのものが欲しいわけではありません。
その商品を通じて得られる変化が欲しいのです。
売上が安定する。
迷いが減る。
人に説明しやすくなる。
自分の商品に自信が持てる。
家族に喜ばれる。
選ばれる理由が伝わる。
この未来が見えると、読者は自分ごととして考えやすくなります。
これはいつか必要な商品を今欲しい商品に変える方法にも通じます。人は、商品が自分の今の問題と未来につながった時に、初めて欲しいと感じます。
どんな人だけが向いているのか?
最後に、対象を少し絞ります。
誰でも歓迎ではなく、どんな人に向いているのかをはっきりさせます。
自分の商品を本気で売れる形にしたい人。
ただ学ぶだけでなく、実践まで進めたい人。
今の働き方に違和感があり、自分の可能性を試したい人。
安さではなく、価値で選ばれる商品を作りたい人。
このように書くと、読者は自分が対象かどうかを判断できます。
さらに、当てはまる人には「これは自分のためのものだ」と感じてもらいやすくなります。
ただの説明を、参加したくなるコピーに変える例
ここで、いくつか例を出します。
「文章講座を開催します」
これだと、ただの案内です。
少し変えるなら、
「自分の商品がなぜ売れないのかを、言葉の力で整理する2時間」
こうなります。
「個別相談を受け付けています」
これも普通です。
見せ方を変えるなら、
「頭の中にある売れない原因を、次にやることまで整理する個別セッション」
になります。
「営業職を募集しています」
これも条件説明に近いです。
オファーに変えるなら、
「まだ知らない業界を開拓し、2年間で自分の営業力を試す仕事」
のようにできます。
コピーは、意味を翻訳する仕事である
ここでやっているのは、嘘をつくことではありません。
実態以上によく見せることでもありません。
本来ある価値を、読者が参加したくなる意味に翻訳しているだけです。
むしろ、これをやらないと、良い商品でも伝わりません。
・良いサービスなのに、ただ「相談できます」
・良い講座なのに、ただ「全5回です」
・良い求人なのに、ただ「未経験歓迎」と書いている。
これでは、読者の想像力が動きません。
売れるコピーは、事実を並べるだけではなく、その事実が読者にとって何を意味するのかを伝えています。
[読者に「自分で気づいた」と思わせるコピーの作り方]でも触れたように、読者は押しつけられると警戒します。けれど、自分の中で「それ、自分に必要かもしれない」と気づける順番で言葉が並んでいると、自然に読み進められます。
あなたのビジネスにどう応用するか?
まず、自分の商品やサービスを、そのまま説明していないか確認してみてください。
講座名、サービス名、求人タイトル、LPの見出し、メルマガの件名。そこに書かれているのは、ただの説明でしょうか。それとも、読者が参加したくなる意味になっているでしょうか。
商品を別の言葉に置き換える
最初にやることは、商品を別の言葉に置き換えることです。
仕事を旅に変えたように、あなたの商品も別の意味に変換できます。
講座は、学習ではなく変化の時間。
コンサルは、相談ではなく判断の整理。
セミナーは、情報提供ではなく気づきの場。
求人は、労働ではなく成長の機会。
商品購入は、消費ではなく未来への投資。
この置き換えができると、コピーの見え方が変わります。
不安を消す言葉を入れる
次に、読者が感じる不安を考えます。
時間がない。
自分にできるか不安。
お金を払って失敗したくない。
難しそう。
続けられるか分からない。
こうした不安を放置しないことです。
ブルース・バートンの広告で「Full Pay」が入っていたように、魅力だけでなく安心材料も必要です。
「初心者でも大丈夫です」だけでは弱い場合は、「最初に現状整理シートを使うので、何から始めればいいか迷いません」と具体的に書く。
「個別サポートがあります」だけではなく、「あなたの商品に合わせて、実際に使う文章まで一緒に整えます」と書く。
このように、不安を具体的に消していきます。
対象者をあえて絞る
最後に、「誰に向いているのか」をはっきりさせます。
誰でも歓迎では、誰にも刺さりません。
この商品は、どんな人に向いているのか。どんな人には向いていないのか。どんな覚悟や興味がある人に来てほしいのか。
ここを書くと、読者は自分で判断できます。
「想像力のある人だけ」という言葉のように、対象を絞ることで、むしろ入りたくなることがあります。
売れるコピーは、商品をそのまま説明しません。
読者が参加したくなる意味に変換します。
仕事を旅に変える。
講座を変化の時間に変える。
相談を判断の整理に変える。
商品を未来への投資に変える。
この変換ができた時、ただの説明はオファーに変わります。
そして、読者は「それなら参加してみたい」と感じるようになります。
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