なぜ、工場のホコリがキャンプ好きに売れる商品になったのか?

今治のホコリの成功理由を解説するマーケティング事例 マーケティング事例
工場のホコリがキャンプ用の着火剤になった理由

ホコリを見て、「これ、売れるんちゃうか」と考える人は、かなり珍しいと思います。普通は捨てます。掃除します。工場ならなおさら、できるだけ早く取り除きたいはずです。見た目もよくないし、放っておくと危ない。わざわざ商品にするものではありません。

ところが、愛媛県今治市の染色会社は、製造工程で出るホコリをキャンプ用の着火剤に変えました。名前は、そのまま「今治のホコリ」。この名前だけでも、かなり引っかかります。きれいな名前に言い換えるでもなく、エコっぽい横文字で包むでもなく、堂々と「ホコリ」と言ってしまう。普通なら隠したくなるものを、あえて商品の顔にしているのです。

しかも、ただの思いつき商品ではありません。2022年度にはグッドデザイン賞も受賞し、捨てられていたものが、ちゃんと人に選ばれる商品になりました。今治のホコリの成功理由を見ていくと、そこには「弱点をなくす」のではなく、「弱点が価値に変わる場所へ持っていく」というマーケティングの考え方が見えてきます。

今治のホコリ 成功理由は「ゴミを売ったこと」ではない

この事例を聞くと、つい「廃棄物をアップサイクルした話」として見たくなります。もちろん、それも間違いではありません。捨てられていたものを商品に変えたのですから、環境配慮の文脈でも語れます。

ただ、マーケティング視点で見るなら、もう一歩踏み込んだ方が面白いです。今治のホコリ 成功理由は、ゴミを売ったことではありません。ホコリの「燃えやすい」という性質を、キャンプ市場に置き直したことです。

工場の中では、燃えやすいホコリは危険です。放っておくと火災リスクになるため、こまめに取り除く必要があります。つまり、工場にとっては面倒な存在でした。けれど、キャンプやバーベキューの場面ではどうでしょうか。

火がつきやすいものは、むしろありがたい存在です。薪や炭に火をつけたい人にとって、「燃えやすい」は価値になります。工場では困りものだった性質が、アウトドアの世界では便利な特徴に変わったのです。

ここが、この商品の一番おいしいところです。弱点を消したのではなく、弱点が強みに変わる場所へ持っていった。だから、ただのリサイクル商品ではなく、ちゃんと使う理由のある商品になりました。

「燃えやすくて危ない」が「火がつきやすくて便利」に変わった

商売でよくあるのが、自分たちの商品や会社の弱点を、なんとか隠そうとすることです。小さい会社だから弱い。知名度がないから不利。変わった商品だから売りにくい。大企業のような設備がないから勝てない。

でも、弱点は絶対的なものではありません。誰に見せるか。どの場面で使うか。どんな言葉で伝えるか。それによって、弱点の意味は変わります。

今治のホコリも同じです。工場内では、ホコリは除去すべきものです。見方によっては、製造工程で出る邪魔者です。しかし、アウトドアを楽しむ人にとっては、火を起こす時に役立つ道具になります。

この変換がうまい。

「廃棄物です」と言われると、少し我慢して使う商品に見えます。でも「カラフルで、火がつきやすく、キャンプの時間に少し遊び心を足してくれる着火剤です」と言われると、欲しくなる理由が生まれます。

この話は、エアジョーダンのマーケティングにも通じます。ナイキは「禁止された」という不利な出来事を、商品の伝説に変えました。普通ならマイナスに見える出来事でも、見せ方を変えると、逆に選ばれる理由になるのです。

今治のホコリも、まさにそれです。燃えやすいから危ない。だから捨てる。普通ならそこで終わります。でも、燃えやすいから着火剤になる。そう見た瞬間に、同じホコリの意味が変わりました。

名前がいいから、話したくなる

もう一つ、この商品の強さは名前にあります。

「今治のホコリ」

この名前は、かなりうまいです。もしこれが「今治アップサイクル着火剤」だったら、ここまで記憶に残らなかったかもしれません。意味は伝わりますが、少し普通です。エコ商品の棚に並んでいる、よくある商品名に見えてしまいます。

しかし、「今治のホコリ」と言われると、思わず二度見します。ホコリを商品名にしていいのか。なぜそんな名前なのか。そもそも本当にホコリなのか。

この小さな違和感が、人に話したくなるきっかけになります。

商品名は、ただ内容を説明するためだけのものではありません。覚えてもらうための入口であり、口コミのきっかけでもあります。特に今の時代は、SNSやブログで紹介されやすいかどうかも重要です。

写真を撮りたくなる見た目。誰かに言いたくなる名前。説明したくなる背景。この3つがある商品は、広告費をかけなくても広がりやすくなります。

「今治のホコリ」は、まさにその条件を持っています。しかも、タオル産地の今治という地域名が入っていることで、ただのホコリではなく、ものづくりの現場から生まれたホコリに見えます。汚いものではなく、タオルづくりの副産物として感じられる。

ここも絶妙です。

同じように、ストーリーで価値が上がった木のボトルの事例でも、ただのモノに背景が加わることで、買う理由が生まれました。商品そのものは小さくても、そこに「語れる理由」があると、価値の見え方は変わります。

エコだけではなく、欲しくなる理由がある

アップサイクル商品でありがちなのが、「環境にいいから買ってください」という見せ方です。もちろん、環境にいいことは大切です。ただ、それだけで売ると、お客さんに少し負担をかけます。買う側からすると、「良いことだから買わないといけない」という気持ちになりやすいからです。

今治のホコリが面白いのは、エコだけに頼っていないところです。

カラフルで見た目が楽しい。キャンプで実際に使える。名前が気になる。今治のものづくりから生まれた背景がある。こうした要素が重なって、単なる環境配慮商品ではなく、「ちょっと使ってみたい商品」になっています。

ここはかなり大事です。

人は正しさだけでは、なかなか動きません。環境にいい。社会にいい。地域にいい。そう言われると、頭では納得できます。でも、財布を開くにはもう一つ理由が必要です。面白い。かわいい。便利。人に話したい。自分の暮らしが少し楽しくなる。

この感情が入ると、商品は急に強くなります。

たとえば、いつか必要な商品を今欲しい商品に変える方法でも書いたように、人は「必要だから」だけではなかなか買いません。今ほしい理由ができた時に、行動に移ります。

今治のホコリは、環境にいいから買う商品でありながら、それだけでは終わっていません。キャンプで使いたい。写真を撮りたい。誰かに話したい。名前にツッコミたい。そういう小さな感情のフックがあるから、商品として記憶に残るのです。

中小企業ほど「当たり前の中」にネタがある

この事例は、中小企業にとってかなり参考になります。なぜなら、大きな広告費や有名人を使った話ではないからです。もともと現場にあったものを見直し、別の市場に置き直したことで商品が生まれています。

多くの会社には、本人たちが価値に気づいていないものがあります。製造工程で出る端材。長年続けてきた技術。お客さんからよく聞かれる質問。職人のこだわり。失敗しないために当たり前にやっている検査。地元では普通すぎる素材。

社内では当たり前でも、外から見ると面白いものは意外とあります。

特に中小企業は、大企業のように何でも揃っているわけではありません。だからこそ、持っているものをどう見せるかが重要になります。

「うちには売れるものがない」と思っている会社ほど、実はすでに材料を持っていることがあります。ただ、それを商品として見ていないだけです。

この話は、シマテックの成功理由にも近いものがあります。中小企業が問い合わせを増やすには、何でもできる会社に見せるより、「何に強い会社なのか」を伝えることが大事です。今治のホコリも、ただの染色会社の副産物ではなく、キャンプで使える着火剤として見せたことで、価値が伝わりました。

あなたのビジネスにどう応用するか?

今治のホコリ 成功理由から学べることは、弱点をすぐに捨てないことです。

あなたの商品や会社にも、一見するとマイナスに見えるものがあるかもしれません。古い。小さい。手作業が多い。大量生産できない。知名度がない。変わっている。ニッチすぎる。説明しないと伝わらない。

でも、その弱点は、本当に弱点なのでしょうか。

売る相手が変われば、意味が変わるかもしれません。使われる場面が変われば、強みになるかもしれません。言葉の置き方を変えれば、選ばれる理由になるかもしれません。

大切なのは、「これは売れない」と決めつける前に、どこなら価値になるかを考えることです。

たとえば、手間がかかる商品なら、「大量生産できない」ではなく「一つずつ丁寧に作っている」と伝えられるかもしれません。地域では当たり前の素材も、都会の人にとっては珍しい体験になるかもしれません。専門的すぎる知識も、初心者向けに噛み砕けば、講座やコンテンツになる可能性があります。

セールスコピーを書く時も同じです。商品の長所だけを並べるのではなく、弱点に見える部分の意味を変えられないか考えてみる。誰にとってなら、その特徴がうれしいのか。どんな場面なら、その性質が役に立つのか。どんな名前をつければ、思わず人に話したくなるのか。

そこに、売れる切り口が隠れています。

今治のホコリは、ホコリをきれいに言い換えた商品ではありません。ホコリであることを隠さず、むしろ名前にしてしまった。厄介だった燃えやすさを、キャンプでは便利な特徴に変えた。捨てるものだった存在に、使う場面と語れる理由を与えた。

だから、ただの廃棄物ではなく、欲しくなる商品になりました。

もし今、自分の商品に強みがないと感じているなら、最初に見るべきなのは外の流行ではありません。まず、自分たちの足元を見ることです。

毎日見ているから、価値に気づいていないもの。面倒だと思っているけれど、別の人には便利なもの。恥ずかしいと思っているけれど、名前にすると面白くなるもの。

売れるネタは、意外とそこにあります。

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この記事を書いた人

   

セールスコピーライター てらじまたくろう

高額でも御社の商品を買いたい人を特定し、集め、高値で販売し、売上に貢献するセールスコピーライター。LP、ステップメール、セールスレター、説明会台本、AI集客動画まで、売れる導線を一気通貫で設計。このブログでは、実際に売れた商品や広告を題材に、「なぜ売れたのか?」をマーケティング視点で解説しています。

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