なぜ、老舗旅館・陣屋は自社システムをSaaS事業にできたのか?

倒産危機の老舗旅館・陣屋が自社開発システムをSaaS事業へ育てた経営戦略 V字回復
陣屋は、自社の旅館経営を立て直すために作った仕組みを、全国の宿泊施設へ提供する事業へ育てました。

経営難に陥った旅館が、新しい収益源を探すとします。

多くの場合、客室を改装する、新しい宿泊プランを作る、料理を充実させるといった方法を考えるでしょう。いずれも、旅館の売上を伸ばすための自然な選択です。

ところが、神奈川県秦野市の鶴巻温泉にある「元湯 陣屋」は、別の収益源を作りました。

自社の経営を立て直すために開発したシステムを、全国の旅館やホテルへ販売したのです。

そのサービスが、クラウド型の宿泊施設管理システム「陣屋コネクト」です。

現在の公式サイトによると、予約、顧客、会計、在庫、スタッフなどの情報を一体で管理できます。導入先は全国630施設以上へ広がりました。

ただし、最初からIT事業を始める計画があったわけではありません。

出発点にあったのは、倒産寸前まで追い込まれた旅館の経営問題でした。

  1. 陣屋はどのような旅館なのか?
  2. 約10億円の借金を抱え、廃業の危機に直面した
  3. 旅館に多かった「紙と口頭」の問題
    1. 情報を何度も書き写していた
    2. ベテランの記憶に接客品質が依存していた
  4. なぜ既製システムではなく、自社開発へ進んだのか?
    1. 旅館には独特の管理項目がある
    2. 現場を知る人が、必要な機能を決めた
  5. 陣屋コネクトは何を一元化したのか?
    1. 予約情報を全スタッフで共有する
    2. 顧客カルテを「おもてなし」に使う
    3. 経営数字を見えるようにする
  6. IT化だけで旅館が再建したわけではない
    1. 高付加価値型の旅館へ変えた
    2. 休館日はコスト削減だけが目的ではなかった
  7. なぜ自社用システムを外部へ販売したのか?
    1. 自社で成果が出たことが、強い営業材料になった
    2. 自社旅館をショールームにできた
  8. SaaS化によって収益構造はどう変わるのか?
    1. 売り切りではなく継続収益を作れる
    2. 現場知識そのものを拡張できる
  9. 2012年の外販開始から全国630施設以上へ
  10. 陣屋コネクトが模倣されにくい理由
    1. 現場と開発の距離が近い
    2. 導入後の業務改革まで支援できる
  11. この事例を「何でもSaaS化できる」と考える危険
    1. 特殊すぎる仕組みは外販できない
    2. システム開発以外の仕事も増える
    3. 本業が成功していることも重要になる
  12. コピーライティングの視点で見る陣屋コネクト
    1. 誰が作ったかが価値になる
    2. 機能ではなく変化を見せる
  13. あなたのビジネスにどう応用するか?
  14. 自社が何度も解決している問題を探す
  15. 社内ツールをそのまま売らない
  16. 最初はサービスとして提供する
  17. 本業を実証の場にする
  18. 継続課金に継続価値を用意する
  19. 陣屋に学ぶべき本当のこと

陣屋はどのような旅館なのか?

元湯 陣屋は、1918年に創業した老舗旅館です。

将棋や囲碁の対局会場としても知られ、歴史ある建物と広い庭園を備えています。現在も旅館事業を続けており、陣屋グループの原点となる施設です。

つまり、陣屋は旅館業をやめ、完全なIT企業へ転換したわけではありません。

現在は旅館運営に加え、DX・IT、経営支援、地域観光などの事業を展開しています。本業で得た知識を使い、事業領域を広げたと捉える方が正確です。

この点は、記事の前提として重要です。

「古い事業を捨てて、成長市場へ移った」という話ではありません。旅館経営を続けながら、そこで蓄積したノウハウを別商品へ変えています。

約10億円の借金を抱え、廃業の危機に直面した

陣屋の経営が厳しくなったのは、2008年から2009年頃です。

リーマンショックの影響に加え、当時の経営者が亡くなる出来事も重なりました。2009年に経営を引き継いだ時点では、約10億円の借金を抱え、半年後の倒産も視野に入る状況だったと報じられています。

金額の大きさだけを見れば、集客不足が原因に思えるかもしれません。

しかし、経営を圧迫していた問題は、売上だけではありませんでした。

旅館内の業務が紙や口頭に依存し、情報が分散していたためです。予約、顧客情報、料理、清掃、会計などがつながらず、確認や転記に多くの時間を使っていました。

その結果、忙しいのに利益が残りません。

スタッフが懸命に働いても、情報伝達のミスや二重作業が発生します。経営判断に必要な数字も、すぐには把握できない状態でした。

旅館に多かった「紙と口頭」の問題

宿泊業では、一組のお客様に多くの部門が関わります。

予約担当者が受け取った情報は、フロント、客室、調理場、接客担当へ伝えなければなりません。さらに、アレルギーや食事の好み、記念日、過去の宿泊履歴も重要です。

情報を何度も書き写していた

陣屋では、手書きの予約台帳から毎日の予定表を作っていました。

その後、翌日の予約情報を別の台帳へ転記し、コピーをスタッフへ配布します。内容に変更があれば、複数の担当者へ改めて伝える必要がありました。

紙の管理には、分かりやすい利点もあります。

操作を覚えなくても使えますし、目の前に置けば一覧できます。ただし、変更が増えると情報の食い違いが起きやすくなります。

どの紙が最新なのか分からない。担当者しか経緯を知らない。過去の情報を探すだけで時間がかかる。

こうした問題が積み重なり、生産性を下げていました。

ベテランの記憶に接客品質が依存していた

旅館の接客では、お客様の好みを覚えているスタッフが強みになります。

しかし、その情報が個人の記憶にしか残っていなければ、担当者が休んだ時に再現できません。また、退職すると知識まで失われます。

陣屋が必要としていたのは、単なる予約表の電子化ではありませんでした。

誰が担当しても、過去の情報を確認できる仕組みです。そのため、顧客情報と予約情報を結びつける必要がありました。

なぜ既製システムではなく、自社開発へ進んだのか?

経営改善のためにITを使うなら、既存の宿泊管理システムを購入する方法があります。

自社開発より早く導入でき、開発費も抑えやすいでしょう。それでも陣屋は、自分たちの業務に必要なシステムを作る道を選びました。

公式サイトは、陣屋コネクトを「旅館経営者自らが開発した」システムと説明しています。全国の宿泊現場や経営者の声を取り入れ、実務に合わせて機能を広げてきました。

旅館には独特の管理項目がある

旅館の予約管理は、客室の空きだけでは終わりません。

宿泊、日帰り、宴会、婚礼などが同じ施設内で動く場合があります。加えて、食事内容、アレルギー、部屋の好み、送迎なども管理しなければなりません。

既製システムが自社の運用へ合わなければ、スタッフは別の表や紙を併用します。

すると、システムを入れた後も二重入力が残ります。業務を効率化するはずのITが、別の手間を増やしかねません。

そこで陣屋は、実際の旅館運営を基準に機能を組み立てました。

現場を知る人が、必要な機能を決めた

陣屋コネクトの強みは、開発会社だけで作った製品ではない点にあります。

旅館の経営者やスタッフが、どの情報を、いつ、誰が必要とするかを知っています。現場で試し、使いにくい部分を直せる環境もありました。

マーケティングの視点では、陣屋そのものが最初のユーザーです。

自社で毎日使用するため、機能の問題を早く見つけられます。さらに、導入後の効果も、自分たちの経営数字や接客現場で確かめられました。

陣屋コネクトは何を一元化したのか?

陣屋コネクトは、宿泊施設の複数業務をクラウド上でつなぐシステムです。

現在の公式情報では、予約、顧客、会計、在庫、スタッフ管理などを一体化しています。さらに、予約エンジン、チェックイン、モバイルオーダー、IoT連携などへ機能が広がりました。

予約情報を全スタッフで共有する

予約が入ると、宿泊日や人数だけでなく、顧客情報とも結びつきます。

スタッフは同じ情報へアクセスできるため、紙を配り直す必要が減ります。また、変更が入った場合も、最新情報を確認しやすくなります。

そのため、伝達漏れや転記ミスを防ぎやすくなりました。

業務効率だけでなく、お客様への案内精度も高まります。

顧客カルテを「おもてなし」に使う

過去の宿泊時に、どの料理を好んだのか。アレルギーはあるのか。部屋や接客にどのような希望があったのか。

こうした内容を顧客情報として残せば、次回の宿泊前に確認できます。

公式の導入事例では、顧客カルテを使うことで、受け身の接客から先回りした接客へ変化したと説明されています。

つまり、ITは人間的な接客を減らすためだけに使われていません。

情報を探す作業を減らし、人にしかできない対応へ時間を使うために導入されました。

経営数字を見えるようにする

予約情報を集約すれば、今後の売上予測も立てやすくなります。

さらに、会計ソフトと連携することで、月々の集計や財務資料の作成を効率化できます。

経営危機にある企業ほど、数字を早く把握する必要があります。

月末まで結果が分からなければ、価格や人員配置の変更が遅れます。リアルタイムに近い形で状況を確認できれば、改善策を早く実行できます。

IT化だけで旅館が再建したわけではない

陣屋の再建を、システム導入だけの成果として説明するのは正確ではありません。

同社は、宿泊価格、営業日、サービス内容、人員配置なども見直しています。さらに、休館日を設け、スタッフのマルチタスク化も進めました。

高付加価値型の旅館へ変えた

客数を増やすだけでは、忙しさも増えます。

そこで、サービス品質を高めながら、適正な価格で販売する方向へ進みました。限られた客室数でも利益を残せる経営を目指したのです。

この改革を支えたのが、顧客情報と経営情報の一元化でした。

お客様ごとの要望を共有できれば、少人数でも接客品質を保ちやすくなります。また、売上や予約の状況が見えれば、無理な安売りも避けられます。

休館日はコスト削減だけが目的ではなかった

陣屋は後に、週3日の休館を取り入れました。

営業日を減らすと、売上まで下がりそうです。しかし、需要を営業日に集めれば、人員と準備を集中できます。

さらに、設備の維持管理や研修にも時間を使えます。

公式サイトでは、週3日の休館後も売上高が伸びた事例として紹介されています。

ここから分かるのは、DXが経営戦略と一体になっていたことです。

古い業務をそのままデジタルへ移すだけでなく、働き方と提供価値まで見直しました。

なぜ自社用システムを外部へ販売したのか?

社内システムが便利でも、外部へ販売できるとは限りません。

自社固有の運用に合わせすぎると、ほかの企業では使えないからです。さらに、販売、導入支援、問い合わせ対応も必要になります。

それでも陣屋が外販へ進めたのは、自社の問題が業界全体にも存在していたためです。

旅館やホテルでは、人手不足、紙管理、属人化、予約情報の分散といった課題が珍しくありません。陣屋グループも、これらを宿泊業界の構造的な問題として挙げています。

自社で成果が出たことが、強い営業材料になった

IT企業が「旅館の業務を効率化できます」と言っても、現場は不安を感じます。

旅館特有の業務を本当に理解しているのか。導入後に接客品質が落ちないか。スタッフが使いこなせるのか。

陣屋には、自社旅館で使っているという実績がありました。

さらに、経営危機から再建した過程もあります。

同じ問題で悩む経営者にとって、単なる機能説明より説得力があります。開発者自身が、システムの利用者でもあるからです。

自社旅館をショールームにできた

ソフトウェアは、画面だけを見ても価値を理解しにくい商品です。

そこで、実際に運営している陣屋を見てもらえば、予約情報の共有や接客での活用方法を確認できます。

つまり、旅館事業がシステム事業の実演場所になります。

一方、システムの導入先から得た声は、旅館経営にも役立ちます。

二つの事業が別々に存在するのではなく、互いに知識を増やす関係になりました。

SaaS化によって収益構造はどう変わるのか?

旅館の売上には、物理的な上限があります。

客室数以上のお客様を、同じ日に宿泊させることはできません。稼働率を高めても、建物の広さが上限になります。

一方、クラウドサービスは、導入施設を増やせます。

同じシステムを基盤として提供できるため、一つの旅館より広い市場へ販売できます。

売り切りではなく継続収益を作れる

陣屋コネクトには、月額固定費用を含む料金体系が用意されています。過去の公式掲載情報でも、初期費用に加え、ライセンスやサポートの月額料金が示されていました。

この形式では、導入時の売上だけで終わりません。

利用が続く限り、月額収益が積み上がります。したがって、宿泊売上が季節や客室数に左右される中で、別の収益柱を作りやすくなります。

ただし、継続課金には継続的な責任も伴います。

システムの更新、障害対応、セキュリティ、問い合わせ対応を続けなければなりません。売り切りの商品より、長い顧客関係が必要です。

現場知識そのものを拡張できる

一つの旅館で働けるスタッフ数には限りがあります。

しかし、旅館運営のノウハウをシステムへ組み込めば、複数施設へ届けられます。

陣屋が販売したのは、プログラムだけではありません。

予約の扱い方、顧客情報の残し方、部門間で共有すべき内容など、旅館経営の考え方も商品へ含まれています。

2012年の外販開始から全国630施設以上へ

陣屋コネクトの外販は、2012年に始まりました。

2018年時点では、外販事業の年商が約2億円まで成長したと報じられています。

その後も導入施設は増えました。

公式サイトでは2024年時点で全国600施設以上、現在のグループ概要では630施設以上とされています。数室規模の施設からホテルチェーンまで、幅広く利用されています。

また、対象機能も予約管理だけに限りません。

チェックイン、鍵の受け渡し、モバイルオーダー、会計、IoT機器との連携など、宿泊体験全体へ広がっています。

この成長から分かるのは、自社の問題が一社だけの特殊事情ではなかったことです。

旅館業界が抱える共通課題へ対応していたため、外部にも需要がありました。

陣屋コネクトが模倣されにくい理由

クラウド型の予約管理システムは、陣屋コネクトだけではありません。

大手IT企業や専門ベンダーも参入しています。そのため、システム機能だけで比べれば、競争は激しくなります。

それでも陣屋には、旅館を自ら経営してきた経験があります。

現場と開発の距離が近い

新しい機能を考える時、陣屋は自社旅館で課題を確認できます。

たとえば、調理場へどの情報を、どの順番で表示すべきか。清掃担当者は、どの端末で情報を見るのか。

現場が近ければ、机上の想像だけで機能を作らずに済みます。

さらに、導入施設から寄せられた意見も、自社で検証できます。

この改善循環が、一般的なソフトウェア会社との差になり得ます。

導入後の業務改革まで支援できる

システムを入れても、古い仕事の進め方が残れば効果は限定されます。

紙台帳とシステムを併用すると、二重管理になります。また、一部のスタッフだけが使えば、情報共有も進みません。

陣屋グループは、IT導入に加え、マルチタスク化や経営改善の支援も行っています。

つまり、道具の販売だけでなく、業務の変え方まで提供しています。

現場で改革に苦労した経験が、支援サービスの土台になっているのです。

この事例を「何でもSaaS化できる」と考える危険

陣屋の成功を見ると、社内で使っているツールを外販したくなります。

しかし、自社で便利だからといって、他社が料金を払うとは限りません。

特殊すぎる仕組みは外販できない

一社だけの運用に合わせたツールは、ほかの会社で使えない場合があります。

担当者名や自社独自のルールが機能へ埋め込まれていると、標準化が難しくなります。

外販するなら、自社固有の部分と、業界共通の部分を分けなければなりません。

陣屋コネクトも、全国の宿泊施設の声を取り入れながら、幅広い施設へ対応する形に発展しました。

システム開発以外の仕事も増える

ソフトウェア事業には、営業、契約、導入設定、研修、サポートが必要です。

さらに、個人情報を扱う場合は、セキュリティと法令対応も欠かせません。

自社だけで使う時には許容できた不具合も、顧客へ販売すれば信用問題になります。

月額収益が魅力的でも、運営コストを過小評価すると利益は残りません。

本業が成功していることも重要になる

自社の課題を解決できていない段階で、他社へ方法を売るのは難しいでしょう。

陣屋の場合は、自社旅館で改善を続け、経営再建の実績を作りました。

その結果が、商品への信頼につながっています。

まず自社で使い、効果を確かめる。その後、少数の企業へ提供し、共通化できる部分を見つける順番が現実的です。

コピーライティングの視点で見る陣屋コネクト

「宿泊施設向け顧客・予約管理システム」という説明だけでは、競合との差が見えにくくなります。

一方、「倒産危機の旅館を立て直す過程から生まれたシステム」と伝えると、背景に具体性が加わります。

さらに、旅館経営者が自ら開発したという事実も、強い信頼材料です。

誰が作ったかが価値になる

ソフトウェアの機能は、競合に追いつかれる可能性があります。

しかし、開発に至った経験はコピーできません。

約10億円の借金、紙台帳の問題、情報共有の失敗、働き方改革。これらを経験した企業が作ったシステムだからこそ、同業者の悩みを理解していると伝えられます。

つまり、陣屋コネクトの物語は、会社紹介にとどまりません。

「なぜ、この会社から買うのか」を説明するセールスコピーとして機能します。

機能ではなく変化を見せる

顧客管理、予約管理、会計連携という機能だけを並べても、導入後の姿は想像しにくいでしょう。

そこで、紙を転記する時間が減る、最新情報を全員で見られる、顧客の好みを接客へ生かせると伝えます。

機能を、仕事上の変化へ翻訳するのです。

BtoB商品のコピーでは、「何ができるか」だけでなく、「現場がどう変わるか」まで示す必要があります。

あなたのビジネスにどう応用するか?

陣屋と同じ規模のシステムを開発する必要はありません。

注目したいのは、本業の問題解決を別の商品へ変える考え方です。

自社が何度も解決している問題を探す

最初に、社内で繰り返している作業を確認します。

毎回同じ手順で資料を作っていないか。新人教育で同じ説明をしていないか。顧客ごとに同じ診断を繰り返していないか。

こうした作業には、標準化できる可能性があります。

ただし、単に面倒な作業を選ぶだけでは足りません。

他社も同じ悩みを抱え、お金を払って解決したいかどうかが重要です。

社内ツールをそのまま売らない

自社用の表計算シートは、作った本人なら使えます。

ところが、他社では項目名が分からず、説明書もありません。また、入力を間違えた時の対応も必要です。

外販する前に、誰でも使える形へ整えます。

入力項目を減らし、手順を標準化します。さらに、導入支援と問い合わせ対応も設計してください。

最初はサービスとして提供する

いきなり大規模なシステムを作ると、開発費が膨らみます。

そこで、最初は人が対応するサービスとして販売する方法があります。

たとえば、社内で使っている診断表を使い、コンサルティングとして提供します。複数社へ提供すると、共通する作業と個別対応が見えてきます。

その後、共通部分だけをツールへ変えれば、不要な機能の開発を避けやすくなります。

本業を実証の場にする

自社で使っている仕組みなら、具体的な導入事例を作れます。

導入前に何時間かかっていたのか。ミスはどの程度減ったのか。売上や利益へどのような影響があったのか。

数字で示せれば、営業の説得力が高まります。

ただし、都合の良い結果だけを切り取らないようにします。導入までの期間や、社員教育にかかった負担も伝える方が信頼されます。

継続課金に継続価値を用意する

月額制にすれば、安定収益が得られるように見えます。

しかし、顧客が毎月価値を感じなければ解約されます。

定期的な更新、データ保管、サポート、改善情報など、継続する理由が必要です。

一回作って放置できる収益モデルではありません。顧客の成功を継続して支える事業だと考える必要があります。

陣屋に学ぶべき本当のこと

陣屋は、旅館経営に見切りをつけ、流行のSaaSへ乗り換えた会社ではありません。

約10億円の借金を抱えた経営危機の中で、紙と口頭に依存した業務を見直しました。さらに、予約、顧客、会計、在庫などをつなぐ仕組みを自社で開発しています。

その仕組みを使い、サービス品質と生産性を同時に改善しました。

ただし、再建はITだけで達成したものではありません。価格、営業日、働き方、接客方法まで含めて経営を組み直しています。

やがて、自社を救った仕組みが、同じ悩みを持つ宿泊施設から求められました。

そこで、社内ツールを「陣屋コネクト」として標準化し、外部へ提供します。現在は全国630施設以上へ導入され、旅館運営とは別の事業領域へ成長しました。

新規事業を考える時、まったく知らない市場へ飛び込む必要はありません。

自社が深く困り、長い時間をかけて解決した問題には、経験と知識が蓄積されています。その問題が業界共通なら、解決方法そのものを商品にできる可能性があります。

陣屋がソフトウェアへ変えたのは、予約台帳だけではありません。

旅館を立て直す過程で得た、現場と経営の知識です。

本業で最も苦しんだ場所に、次の事業の種が隠れている。

陣屋コネクトは、その可能性を示す事例です。

参考記事:

陣屋グループ概要|陣屋コネクト

陣屋コネクト公式サイト

自社開発DXで経営回復!陣屋コネクトはここからはじまった。

クラウド旅館・ホテル向けシステム「陣屋コネクト」|J-Net21

借金10億円、倒産まであと半年|ITmedia エンタープライズ

これを旅館と呼んでいいのか!? 老舗旅館「陣屋」が切り開く新たなビジネスモデル|ITmedia エンタープライズ

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この記事を書いた人

   

セールスコピーライター てらじまたくろう

高額でも御社の商品を買いたい人を特定し、集め、高値で販売し、売上に貢献するセールスコピーライター。LP、ステップメール、セールスレター、説明会台本、AI集客動画まで、売れる導線を一気通貫で設計。このブログでは、実際に売れた商品や広告を題材に、「なぜ売れたのか?」をマーケティング視点で解説しています。

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