なぜ、Trader Joe’s(トレーダージョーズ)は広告をほとんど出さないのに大人気なのか?

Trader Joe’sが大規模広告に頼らず独自商品と店舗体験で口コミを生むマーケティング戦略 勝手に広がるマーケティング
Trader Joe’sは広告をなくしたのではなく、商品と店舗体験を広告として機能させています。

広告をほとんど見かけないにもかかわらず、熱心なファンが次々と商品を紹介してくれるスーパーがあります。

それが、アメリカで人気を集めるTrader Joe’sです。

一般的なスーパーマーケットは、テレビCM、新聞広告、アプリのクーポン、デジタル広告などを使い、新商品や特売情報を広く知らせます。一方、Trader Joe’sは大規模な広告キャンペーンに強く依存していません。

それでも、新商品が発売されればSNSに写真やレビューが投稿され、店舗によっては開店前から列ができます。さらに、お気に入りの商品を紹介する動画や記事まで数多く作られています。

普通に考えれば、広告を減らすほど、新しいお客さんとの接点も減りそうです。

では、なぜTrader Joe’sは広告をほとんど出さなくても、お客さんを集め続けられるのでしょうか。

その理由は、単純に口コミが強いからではありません。

Trader Joe’sでは、商品、価格、売り場、接客、自社メディアのすべてが、広告の代わりとして機能するように設計されています。

つまり、広告をなくしたのではなく、広告の役割を事業全体へ組み込んでいるのです。

Trader Joe’sは、本当に広告をしていないのか?

最初に整理しておきたいのは、Trader Joe’sが顧客との情報発信をまったく行っていないわけではない点です。

公式サイトでは、新商品、レシピ、商品の背景などを紹介しています。さらに、独自メディアの「Fearless Flyer」や公式ポッドキャスト「Inside Trader Joe’s」も運営しています。

したがって、Trader Joe’sは「宣伝をしない会社」ではありません。

テレビCMや大型看板のような外部広告に大きく頼らず、自分たちで管理できる媒体と店舗体験を中心に情報を届ける会社です。

一般的なスーパーのチラシは、商品写真、価格、割引率が中心になります。それに対して、Fearless Flyerでは、商品の開発背景、味の特徴、原材料、楽しみ方などを物語として伝えています。

この違いは小さく見えて、非常に重要です。

価格だけを伝えれば、お客さんは価格だけで商品を比較します。一方、商品の背景や使い方まで伝えると、商品に意味や物語が加わります。

Trader Joe’sは、広告を減らした代わりに、商品を欲しくなる文脈を自社メディアで作っているのです。

商品そのものがTrader Joe’sの広告になっている

Trader Joe’sのマーケティングを理解するうえで欠かせないのが、プライベートブランド商品です。

店頭に並んでいる商品の大半は、Trader Joe’sの名前や独自ブランドで販売されています。

たとえば、一般的なスーパーでメーカーの商品を買った場合、お客さんの記憶に残るのは商品のブランド名です。次に同じ商品を買う時は、別のスーパーやオンラインショップを選ぶかもしれません。

しかし、Trader Joe’sの場合、気に入った商品をもう一度買いたければ、Trader Joe’sへ行く必要があります。

すると、

「この商品がおいしかった」

という感想が、

「Trader Joe’sには面白い商品がある」

という店舗全体への評価へ変わります。

さらに、家族や友人へ商品を紹介する時にも、商品名と一緒にTrader Joe’sの名前が語られます。

つまり、独自商品が売れるほど、Trader Joe’sという店舗ブランドも同時に宣伝される仕組みです。

「ここでしか買えない」が再来店の理由になる

価格が安いだけなら、さらに安い競合店が現れた時にお客さんは移動します。

一方、そこでしか買えない商品があれば、価格以外の来店理由が生まれます。

「あの商品をもう一度買いたい」

「新しい味を試してみたい」

「季節限定の商品が出ていないか確認したい」

このような理由が、継続的な来店につながります。

さらに、商品を購入したお客さんがSNSで写真や感想を投稿すると、その内容を見た別の人も興味を持ちます。

企業自身が「おすすめです」と宣伝するより、普段見ている発信者や友人が「これがおいしかった」と紹介する方が信じやすいものです。

Trader Joe’sでは、独自商品が来店理由になり、その商品を体験したお客さんが次の宣伝役になります。

この循環が、大規模広告への依存を抑える土台になっています。

商品数を絞ることで、選びやすさと発見を両立している

一般的な大型スーパーには、似た商品が何十種類も並んでいます。

選択肢が多いことは便利ですが、一方で、価格、容量、品質、成分を比較する負担も増えます。

選択肢が多すぎると、何を選べばいいのか分からなくなり、結局いつもの商品だけを買う人も少なくありません。

Trader Joe’sは、一般的な大型スーパーと比べて商品数を絞り、独自商品を中心に売り場を構成しています。

その結果、お客さんは、

「この店が選んだ商品なら試してみよう」

と考えやすくなります。

つまり、商品数を減らすことで、店舗側の選定そのものが信頼になります。

さらに、季節商品や新商品が加わるため、店内を回る行為には発見があります。

必要なものを短時間で買うだけの場所ではなく、まだ知らない商品を探す場所になるのです。

そのため、Trader Joe’sの買い物は、単なる日用品の補充ではなく、小さな宝探しに近い体験になります。

限定商品が「今行く理由」を作っている

Trader Joe’sでは、季節限定商品や期間限定の商品が頻繁に登場します。

秋にはパンプキン関連の商品が増え、冬にはホリデー向けの商品が並びます。ところが、人気商品であっても、いつでも同じものが買えるとは限りません。

この不確実性が、お客さんに「今見に行こう」という理由を与えます。

いつでも買える商品なら、購入を先延ばしできます。

しかし、

「次に来た時には売り切れているかもしれない」

「今年の販売はもう終わるかもしれない」

と感じれば、行動は早くなります。

さらに、限定商品はSNSとの相性も良いです。

新商品を見つけた人が写真を投稿し、その投稿を見た人が店舗へ向かいます。売り切れた後には「買えなかった」という話題まで生まれます。

Trader Joe’sは限定性を利用して、商品にニュース性と会話のきっかけを作っているのです。

店舗そのものが巨大な広告になっている

Trader Joe’sの強さは、商品だけではありません。

手描き風の案内表示、個性的なパッケージ、入口付近の花、親しみやすいスタッフなど、店舗全体が独自の雰囲気を作っています。

テレビCMなら、数十秒でブランドの世界観を伝えます。

一方、店舗では、お客さんがその世界観の中を実際に歩き、商品を手に取り、スタッフと会話し、購入して持ち帰ります。

つまり、広告を「見る」のではなく、ブランドを「体験する」わけです。

この体験が良ければ、印象は店舗を出た後にも残ります。

「安かった」という評価だけではなく、

「楽しかった」

「面白い商品が見つかった」

「また行きたい」

という感情が生まれます。

価格の記憶は競合に上書きされやすいですが、体験の記憶は比較的残りやすいものです。

Trader Joe’sは店舗を販売場所としてだけではなく、ブランドを理解してもらう広告媒体として活用しています。

スタッフとの会話もマーケティングの一部になっている

Trader Joe’sでは、スタッフとの自然なやり取りも店舗体験の一部になっています。

商品について質問すれば、味や使い方を教えてくれる。レジでは購入した商品について会話が始まる。おすすめの商品を教えてもらえることもあります。

こうした接点は、テレビCMほど派手ではありません。

それでも、お客さんが店を好きになる理由としては強く働きます。

商品は競合に似たものを作られる可能性があります。価格も、永遠に最安値を維持できるとは限りません。

しかし、スタッフとの会話を含めた「その店で過ごした時の感じ」は、簡単には再現できません。

そこでお客さんの中に残るのは、単なる価格の満足ではなく、店に対する親近感です。

この親近感が、再来店や口コミにつながります。

Fearless Flyerは、価格表ではなく商品の価値を育てる読み物である

一般的なスーパーのチラシでは、特売商品と価格が中心になります。

たとえば、

「卵がいくら」

「肉が何%引き」

「今週だけの特価」

といった情報です。

もちろん、価格訴求には即効性があります。

しかし、価格だけで集客すると、お客さんはさらに安い店へ移動しやすくなります。

Fearless Flyerは、単に値段を伝える媒体ではありません。

商品の開発背景、味の特徴、楽しみ方、食べる場面などを説明することで、商品そのものに意味を加えています。

たとえば、同じ冷凍食品でも、

「今週は何ドルです」

と伝えるだけの場合と、

「忙しい平日の夜に、短時間で楽しめる商品として開発されました」

と伝える場合では、商品の見え方が変わります。

前者は価格比較を促しますが、後者は使用場面を想像させます。

Trader Joe’sは、自社メディアを値引きの告知場所ではなく、商品の価値を伝える読み物として使っているのです。

Trader Joe’sは口コミに任せているわけではない

口コミで広がっていると聞くと、自然発生的に人気が出たように見えるかもしれません。

しかし、口コミは偶然だけで生まれるものではありません。

人が誰かに話したくなるためには、話の材料が必要です。

Trader Joe’sには、その材料が数多くあります。

そこでしか買えない商品、見たことのない味、季節限定の商品、個性的なパッケージ、店内での発見、スタッフとの会話が組み合わさり、お客さんの中に「誰かへ伝えたい」という気持ちを作ります。

つまり、Trader Joe’sは口コミをお願いしているのではありません。

口コミが生まれやすい材料を、商品と体験の中に埋め込んでいます。

この違いは重要です。

紹介キャンペーンを始めただけでは、お客さんが話したい理由は生まれません。まず、誰かへ話したくなる商品や体験が必要なのです。

広告を減らしたこと自体が成功の理由ではない

Trader Joe’sの事例を見て、

「広告をやめれば利益が増える」

と考えるのは危険です。

広告をやめただけで、商品も店舗体験も普通なら、新しいお客さんは増えません。

Trader Joe’sが強いのは、広告費を使わないことではなく、広告が果たしている役割を別の場所へ移していることです。

独自商品が興味を引き、個性的なパッケージが売り場で目を止めます。さらに、店舗全体がブランドの世界観を伝え、スタッフとの会話が信頼を生み、Fearless Flyerが商品の背景や価値を説明します。そのうえで、購入したファンの投稿が新しいお客さんを店舗へ連れてきます。

つまり、外部広告に任せるはずだった役割を、商品、売り場、接客、自社メディア、口コミへ分散させているのです。

そのため、大規模広告に依存しなくても、ブランドの魅力が継続的に伝わります。

Trader Joe’sは広告をしない会社ではありません。

会社全体を広告として機能させている会社なのです。

オールドスパイスやコストコとの共通点

Trader Joe’sの戦略は、これまで紹介してきたマーケティング事例とも共通しています。

たとえば、なぜ、オールドスパイスは“おじさんの匂い”から若者に売れるブランドになったのか?では、男性用ボディソープを単なる機能商品として売るのではなく、思わず誰かに話したくなる広告表現によってブランドを再構築した事例を解説しました。

また、コストコはなぜ会員制なのか?年会費を払っても通いたくなる理由では、価格だけでなく、会員制、限定感、まとめ買い、店舗体験が来店理由を作っている点を取り上げています。

さらに、なぜ、高すぎる鍋バーミキュラは選ばれたのか?でも、商品の機能だけでなく、背景にある物語や独自性が高価格への納得を生み出している点を解説しています。

これらに共通するのは、商品だけを広告で押し出しているわけではないことです。

人に話したくなる理由、選びたくなる意味、価格に納得できる文脈まで含めて設計しています。

Trader Joe’sも同じです。

販売促進を広告だけに任せず、事業全体で選ばれる理由を作っています。

コピーライティングにも同じ考え方が使える

この戦略は、コピーライティングにも応用できます。

多くの企業は、広告で商品を目立たせようとします。

しかし、広告をクリックした先のページが普通なら、反応は続きません。

「高品質です」

「専門家が対応します」

「お客様を大切にします」

このような言葉は、競合も使っています。そのため、読者にとって違いが見えにくくなります。

そこで必要になるのが、独自の文脈です。

なぜ、その商品を作ったのか。

どこにこだわったのか。

普通の商品と何が違うのか。

どんな人が、どのような場面で役立てたのか。

購入後に、何を誰かへ話したくなるのか。

こうした材料をコピーに入れることで、商品は単なる機能の集合から、意味のある存在へ変わります。

ヘッドライン作りでも同じです。

ユージン・シュワルツに学ぶ、ヘッドラインを強化する38の方法で解説したように、読者は商品名そのものより、得られる変化、意外な事実、具体的な事例、他との違いに反応します。

つまり、広告費を増やす前に、語る価値のある材料を作ることが重要なのです。

Trader Joe’sの戦略にも弱点はある

成功事例を扱う時は、良い面だけを切り取らない方が信頼できます。

Trader Joe’sのプライベートブランド戦略については、小規模ブランドの商品やパッケージとの類似を指摘された事例もあります。

独自商品を低価格で提供する戦略は、消費者にとって魅力的です。その一方で、製造パートナーや小規模ブランドとの関係、商品の出所、アイデアの扱い方については慎重さが求められます。

話題になる商品を素早く提供することと、開発者や取引先へ適切な敬意を払うことは、どちらも長期的なブランド信頼に関わります。

したがって、Trader Joe’sの表面的な手法だけをまねるべきではありません。

重要なのは、独自商品や限定商品を増やすことよりも、自社、お客さん、取引先のすべてが継続的に価値を得られる仕組みを作ることです。

あなたのビジネスにどう応用するか?

Trader Joe’sと同じ規模の商品開発や店舗運営は必要ありません。

取り入れるべきなのは、広告をやめることではなく、広告以外の場所にも選ばれる理由を作る考え方です。

人に話したくなる材料を一つ作る

まず、自分の商品について考えてみてください。

お客さんが友人へ説明する時、どのような言葉を使うでしょうか。

「普通に良かった」

で終わるなら、口コミは広がりにくいです。

一方、

「申し込んだら、最初に売れない原因を18項目で診断してくれた」

「講座なのに、聞くだけではなくその場で自分のコピーが完成した」

「商品が届いた時の箱に、意外な仕掛けが入っていた」

といった具体的な話があれば、人に伝えやすくなります。

そのため、口コミを増やしたいなら、紹介キャンペーンを始める前に、話のネタを作ることが大切です。

どこでも買える状態から抜け出す

次に、あなたから買う理由を作ります。

サービス内容が競合と同じに見える場合、価格比較が始まります。

そこで、独自の診断、提供手順、サポート、教材、体験、ネーミングなどを加えます。

たとえば、ただの「LP添削」よりも、

「読者が止まっている場所を18項目で見つけるLP診断」

の方が違いを説明しやすくなります。

独自性とは、誰も見たことのない技術を発明することだけではありません。

既存のサービスを、覚えやすく、話しやすく、違いが理解できる形へ編集することでも作れます。

広告の先にある体験を見直す

広告の反応が悪い時は、見出しや画像だけを変えたくなります。

もちろん、それも必要です。

ただし、広告をクリックした後の体験も確認してください。

ページを開いた瞬間に、自分向けだと分かるか。

価格の理由に納得できるか。

申し込み後の流れが見えるか。

問い合わせへの不安が残っていないか。

購入後に期待を超える体験があるか。

広告だけで売ろうとすると、毎回強い刺激が必要になります。

一方、商品や体験自体に魅力があれば、その内容が次の広告材料になります。

自社メディアを宣伝から読み物へ変える

メルマガやブログで、商品案内ばかり送っていないでしょうか。

Fearless Flyerの考え方を応用するなら、商品名や価格だけでなく、商品にまつわる物語を伝えます。

なぜ作ったのか。

どこにこだわったのか。

どんな失敗から生まれたのか。

誰に、どのような場面で使ってほしいのか。

ほかの方法と何が違うのか。

こうした情報を加えれば、メルマガやブログは宣伝の置き場から、商品の価値を育てるメディアへ変わります。

Trader Joe’sに学ぶべき本当のこと

Trader Joe’sから学ぶべきなのは、

「広告を出さなくても成功できる」

という単純な話ではありません。

独自商品があり、店舗へ行く理由があり、人に話したくなる発見があります。さらに、スタッフとの接点が記憶に残り、自社メディアが商品の物語を伝えています。

それらが別々に存在するのではなく、一つのブランド体験としてつながっているため、お客さん自身が広告の続きを担ってくれるのです。

広告費を減らしたいなら、最初に広告を止めるべきではありません。

まず、広告がなくても語られる商品と体験を作る。

Trader Joe’sの強さは、まさにそこにあります。

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この記事を書いた人

   

セールスコピーライター てらじまたくろう

高額でも御社の商品を買いたい人を特定し、集め、高値で販売し、売上に貢献するセールスコピーライター。LP、ステップメール、セールスレター、説明会台本、AI集客動画まで、売れる導線を一気通貫で設計。このブログでは、実際に売れた商品や広告を題材に、「なぜ売れたのか?」をマーケティング視点で解説しています。

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