なぜ、言いにくい商品名を直さずに売上20%増につなげられたのか?

インドネシアの「Say it Proud」キャンペーンは、なぜヘッド&ショルダーズの言い間違いをネタにして王座を奪えたのか?完璧を装わない正直さとユーモアで競合を抜き、売上20%増を達成したマーケティング戦略を解説する、てらじまたくろうのブログ記事アイキャッチ画像 マーケティング事例

30年間、誰も崩せなかった不動の王座

インドネシアのフケケアシャンプー市場。そこには、30年以上にわたってシェア1位に君臨する、絶対的な王者が存在しました。誰もがその牙城を崩すのは不可能だと信じていました。

後発のブランドは、どんなに莫大な広告費を投じても、王者の影を踏むことすらできなかったのです。しかし、2020年代。その完璧な王者を、ある「恥ずかしい事実」をさらけ出したキャンペーンが、一瞬にして抜き去りました。

そのキャンペーンは、世界的なブランド「ヘッド&ショルダーズ(Head & Shoulders)」がインドネシアで展開した「Say it Proud(誇りを持って言おう)」です。

彼らが目をつけたのは、自社のブランド名が、インドネシアの人々にとって非常に発音しづらく、日常的に「言い間違えられている」という事実でした。「Hait & Solder」、「Hey & Shoulder」、「Heddun & Shorudas」……。普通なら、企業はこうした「カッコ悪い事実」を隠そうとします。

しかし、彼らはその言い間違いを、あえて広告のセンターに据えたのです。一体、自社名を間違えられるという屈辱を、どうやって「最強の武器」に変えたのでしょうか。その インドネシア Say it Proud マーケティング の狂気とも言える逆転のシナリオを紐解いていきましょう。

1.自社への「笑い」で、完璧な王者を「無機質」に変えた

このキャンペーンの最大の勝因。それは、自社のブランド名を「笑い飛ばす」という、圧倒的なユーモアと人間味にあります。彼らは、街の人々が自社名を必死に発音しようとして、珍妙な言い間違いをする様子を、そのままCMにしました。

完璧を装うのではなく、不器用で、親近感の湧く姿をさらけ出したのです。消費者は、その姿を見て爆笑し、そして強烈な親近感を抱きました。「このブランド、自分たちのカッコ悪いところを隠さないんだ。面白い!」と。

メリットばかりを並べる広告。消費者はそれに飽きています。一方、自社のカミソリを「ふざけた動画」でユーモアたっぷりに伝えたDollar Shave Clubの事例のように、ユーモアは無機質な巨大競合に対する、最強の対抗策になります。彼らは、王者の「完璧さ」を「冷たさ(人間味のなさ)」へと変え、自らの「不完全さ」を「愛される個性」へと昇華させたのです。

2.「正直さ」が、30年分の信頼を一瞬で凌駕した

二つ目の理由は、「正直さ」という、ライバルが逆立ちしても真真似できないブランド武器を手に入れたことです。「私たちは、あなたたちに正しく発音してもらうことよりも、あなたたちのフケの悩みを解決することの方が、ずっと重要だと思っている」。

このメッセージが、30年分の王者の威光を一瞬で吹き飛ばしました。消費者の心理には、強烈なバイアスが働きます。要するに、「自社の恥ずかしい部分を隠さない相手は、嘘をつかない(=商品も本物だ)」という心理です。

デメリットを正直にさらけ出すことで、顧客の強烈な信頼を勝ち取る手法。これは、自社のピザを「まずい」と認めてV字回復したドミノ・ピザの戦略とも、本質的に同じです。彼らは、正直さという誠実な物語(ストーリー)を売ることで、顧客と感情的な絆を築いたのです。

3.ユーモアがもたらした、圧倒的な「売上インパクト」

そして、第3の勝因。それは、このユーモアと正直さが、単なるブランドイメージの向上にとどまらず、爆発的な売上へと直結したことです。

CMを見て笑った消費者は、ドラッグストアに足を運んだ際、迷わずそのブランド(ヘッド&ショルダーズ)を手に取りました。ブランド名が発音できなくても、「ほら、あの言い間違えのCMのやつ!」と、顧客自身が物語を語り始めたのです。

結果、何が起きたか。売上は驚異の「約20%増加」。別の資料でも「全体売上+13%」という、二桁成長を達成しました。その結果、30年以上トップを走り続けた競合を抜き、フケケアカテゴリでシェア1位に輝いたのです。

完璧なプロとして振る舞う必要はありません。むしろ、自社をさらけ出すことで生まれた誠実なクチコミこそが、何億円かけたテレビCMよりも、 Googleの広告よりも、強烈な信頼を生みました。彼らは、広告費という「嘘」を捨て、自らの誠実さとユーモアに賭け、そして勝ったのです。

あなたのビジネスにどう応用するか?:「完璧」を捨て、「人間味」をさらけ出せ

インドネシアで起きた「ヘッド&ショルダーズ」の奇跡から学べること。それは、「顧客は完璧な商品ではなく、誠実でユーモアのある『人間味』に金を払う」という真実です。

もし、あなたが強力なライバルに勝てないと悩んでいるなら。あるいは、価格競争に巻き込まれて疲弊しているなら。一度、格好をつけるのをやめてみてください。完璧なプロとして振る舞う必要はありません。むしろ、自社の非を認めること、自社を笑い飛ばすこと。それが、最強の武器になります。

具体的には、以下の問いを自分に投げかけてみてください。

  • あなたが「隠したい」と思っている、自社のカッコ悪い事実や欠点は何ですか?
  • その欠点をユーモアに変えて、顧客と「一緒に笑う」ことはできませんか?
  • 完璧さを装うのをやめて、顧客に「正直な想い」をシステム化して伝えられませんか?

捨てることは、見つけることです。あなたの中にある「正直な種」を見つけ出し、それを情熱を持って語り始めてください。その誠実な言葉こそが、あなたをスペック競争から解放し、ライバルが真真似できない、熱狂的な未来を連れてきてくれるはずです。

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この記事を書いた人

   

セールスコピーライター てらじまたくろう

高額でも御社の商品を買いたい人を特定し、集め、高値で販売し、売上に貢献するセールスコピーライター。LP、ステップメール、セールスレター、説明会台本、AI集客動画まで、売れる導線を一気通貫で設計。このブログでは、実際に売れた商品や広告を題材に、「なぜ売れたのか?」をマーケティング視点で解説しています。

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