広告を出したい会社にとって、大型ビジョンは分かりやすい媒体です。人通りの多い場所に映像を流せる。多くの人の目に触れる。街の中心に自社の商品やサービスを出せる。普通なら、それだけで価値がありそうに見えます。
では、なぜ新宿の有名な大型ビジョンであるアルタビジョンを持っていたスタジオアルタは、4期連続赤字に苦しんだのでしょうか。
しかも、アルタビジョンは誰も知らない無名媒体ではありません。新宿東口の象徴的な場所にあり、「笑っていいとも!」のイメージも強く、多くの人が一度は見たことのある存在です。それでも、主力事業を失ったあと、会社は厳しい状況に追い込まれました。
このアルタビジョン V字回復 理由を見ていくと、売れない原因が「商品が弱いから」とは限らないことが分かります。むしろ、商品そのものは強いのに、売り方の定義が古くなっていた可能性があります。
失ったのは売上だけではなく、売る理由だった
スタジオアルタは、もともとテレビ番組制作やスタジオ運営、アルタビジョンの運営などを行っていました。しかし、長年の象徴だった「笑っていいとも!」が終了したことで、主力事業を失うことになります。
ここで大きかったのは、単に売上が減ったことだけではありません。会社として「何で稼ぐのか」が揺らいだことです。
アルタビジョンという媒体は残っています。新宿という立地も残っています。街に映像を流す機能も残っています。それなのに、これまでの延長線上で売ろうとすると、どうしても「何秒流せるか」「いくらで出せるか」という広告枠の話になってしまう。
広告枠として売ると、他の屋外広告やデジタル広告と比較されます。価格、表示回数、視認性、放映秒数。そうなると、どれだけ有名な場所でも、クライアントからすれば「費用対効果はどうなのか」という話になります。
つまり、問題はアルタビジョンそのものではありませんでした。「大型ビジョンの広告枠」として売っていたことが、価値を小さく見せていたのです。
広告枠ではなく、バズの起点として売った
スタジオアルタの転換点は、アルタビジョンを単なる広告枠ではなく、「バズを生む起点」として捉え直したことです。
この変化は大きいです。
広告枠を売る場合、買う側が欲しいのは「放映時間」です。15秒を何回流せるのか。1週間でどれだけ表示されるのか。どの場所に出るのか。もちろん、これも大事です。
一方で、バズの起点として売る場合、買う側が欲しいのは「話題化」です。SNSで投稿される。人が集まる。来店につながる。ニュースになる。ファンが写真を撮って拡散する。そうなると、同じアルタビジョンでも意味が変わります。
これは「売り物の変更」です。
商品を変えたのではありません。売っている意味を変えたのです。
ドミノ・ピザも、ただピザを売るだけではなく、「正直に失敗を認めて改善する」という物語を売ることで印象を変えました。同じ商品でも、何を前面に出すかで受け取られ方は大きく変わります。この話は、ドミノ・ピザがV字回復したマーケティング事例にも通じます。
KPIを「放映量」から「話題化」に変えた
広告枠売りの弱点は、成果が見えにくいことです。たしかに多くの人に見られたかもしれない。でも、それが売上や来店にどうつながったのかは説明しづらい。
だから、クライアント側は慎重になります。「人通りは多いですよ」と言われても、広告予算を出す側は納得しきれません。特に、SNS広告やWeb広告のように数字で見える媒体が増えるほど、屋外広告は説明が難しくなります。
そこで重要になるのが、KPIの再設計です。
「何回流したか」ではなく、「どれだけ話題になったか」「来街や来店につながったか」「SNS上でどんな反応が起きたか」を価値として見せる。すると、アルタビジョンは単なる露出媒体ではなく、キャンペーン全体の起点になります。
アルタビジョンも同じです。街に映すだけなら広告です。しかし、誰かがスマホで撮りたくなり、SNSに載せたくなり、友達に教えたくなる設計になれば、それは広告枠を超えます。この「思わず共有したくなる仕掛け」は、Spotify Wrappedが毎年SNSで拡散される理由にも近い考え方です。
媒体の価値は、見る人数だけで決まらない
大型ビジョンの価値は、単純な通行量だけでは決まりません。どこにあるのか。誰が見るのか。そこで何を見たら、人はどう動くのか。この文脈まで含めて価値になります。
新宿アルタ前は、待ち合わせやイベント、若者文化、買い物の動きと結びつきやすい場所です。だからこそ、ただ企業広告を流すだけではなく、「人が集まる」「写真を撮る」「SNSに投稿する」という行動設計ができます。
同じ媒体でも、売り方が変わると価格の理由も変わります。
広告枠として売るなら、比較対象は他の広告枠です。しかし、話題化の起点として売るなら、比較対象はPR施策、イベント、SNSキャンペーン、来店促進になります。すると、クライアントの頭の中で予算の出どころが変わります。
これはBtoBの販売でもかなり重要です。自分の商品が「作業代行」として見られているのか、「売上改善の起点」として見られているのかで、価格は変わります。競合と比べられて苦しくなる場合は、競合を否定するより、自分の商品の役割を変えて見せるほうが強いことがあります。この考え方は、競合をリスペクトして、あなたの商品を選ばせる方法にもつながります。
V字回復の本質は、商品改善ではなく価値提案の改善だった
アルタビジョン V字回復 理由の核心は、商品そのものを大きく変えたことではありません。すでにある資産の見せ方を変えたことです。
新しい媒体を作ったわけではありません。まったく別の商品を開発したわけでもありません。すでに持っていたものを、「広告を流す場所」から「話題を生む場所」へ変えた。
この転換が起きると、営業で話す内容も変わります。
「新宿で映像を流せます」ではなく、「新宿から話題を作れます」になる。「広告枠を買いませんか」ではなく、「SNSで広がる起点を作りませんか」になる。ほんの少しの違いに見えますが、買う側が感じる価値はまったく違います。
オールドスパイスも、古いブランドとして見られていた状態から、ユーモアとSNS時代の見せ方で若い世代に再接続しました。商品そのものをまったく別物にしたというより、受け取られ方を変えた事例です。ブランド再生の話としては、オールドスパイスのマーケティング戦略にもつながります。
あなたのビジネスにどう応用するか?
アルタビジョンの事例から学べるのは、売れないときほど「商品を変える前に、何を売っていることになっているか」を見直すべきだということです。
たとえば、あなたがLP制作を売っているなら、「LPを作ります」と言った瞬間に、他の制作者と比較されます。価格、納期、デザイン、実績。もちろん大事ですが、その土俵だけで戦うと消耗します。
しかし、「広告費を無駄にしないための販売導線を作ります」と言えば、売り物の意味が変わります。LPという制作物ではなく、売上を生む導線の一部として見てもらえるからです。
講座販売でも同じです。「動画教材を渡します」だと、安い教材や無料動画と比べられます。けれど、「受講生が実践して成果報告できる場を作ります」と伝えれば、価値はコンテンツ量ではなく、変化の体験に移ります。
コンサルも、「月1回相談できます」では弱いです。相談時間を売ると、時間単価で見られます。そうではなく、「意思決定の迷いを減らし、次にやるべきことを明確にする場」と定義すれば、売っているものは時間ではなく前進になります。
自分の商品が売れにくいとき、多くの人は機能を増やそうとします。特典を足す。値下げする。サポートを増やす。もちろん、それが必要な場合もあります。しかし、その前に見るべきなのは、お客さんがあなたの商品を何として認識しているかです。
作業なのか。商品なのか。広告枠なのか。変化のきっかけなのか。話題化の起点なのか。
アルタビジョンは、媒体そのものを大きく変えたのではありません。売っている価値の定義を変えました。だからこそ、広告枠売りから抜け出し、V字回復のきっかけを作れたのです。
あなたの商品も、売れない理由が品質不足とは限りません。ただ、古い言葉で売っているだけかもしれません。商品を変える前に、まず「自分は何を売っているのか」を変えてみる。そこに、価格と需要を立て直すヒントがあります。


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