なぜ、LUUPは“未来の乗り物”で終わらず街に広がったのか?

LUUP マーケティング 電動キックボードを街に広げた市場づくりの理由を解説 Uncategorized
LUUPは電動キックボードそのものではなく、日本の街で使える状態を作った

LUUP マーケティングで不思議なのは、電動キックボードという新しい乗り物を、ただの珍しいガジェットで終わらせなかったところです。

日本にも、かつて“未来の乗り物”として注目されたものがありました。セグウェイです。体重移動だけで進む、立ち乗り型の電動モビリティ。見た目のインパクトもあり、「これからの移動手段になるのでは?」と期待されました。

でも、セグウェイは街中で誰もが自由に使う日常の移動手段にはなりませんでした。

一方でLUUPは、駅前、住宅街、オフィス街、観光地の近くで見かける存在になっています。もちろん、電動キックボードには安全面や交通マナーの課題もあります。それでも、街の中にポートが増え、アプリで借りて、短い距離を移動する手段として使われるようになりました。

同じように“未来っぽい乗り物”だったのに、なぜ広がり方が違ったのでしょうか。

この違いに、新しい商品を市場に浸透させるヒントがあります。

新しいだけでは、人は日常では使わない

新しい商品を見ると、売り手はついこう考えます。

これは便利だから広がるはず。

今までになかったから話題になるはず。

一度使えば良さが分かるはず。

たしかに、新しさは強い武器です。ニュースにもなりやすいし、最初の注目も集めやすい。SNSでも「なにこれ?」と反応される可能性があります。

ただし、新しいだけでは日常には入りません。

面白いものと、使われるものは違う

セグウェイは、見た目のインパクトがありました。乗っている姿も未来的で、イベントや施設内で見れば注目されます。

でも、日常の移動手段として考えると、話は変わります。

どこを走っていいのか。誰が乗れるのか。事故が起きたらどうなるのか。街の中に置き場はあるのか。通勤や買い物で本当に使えるのか。

こうした条件が整わないと、人は「面白そう」と思っても、普段使いまではしません。

商品やサービスは、珍しさだけで広がるわけではありません。お客さんの生活の中で、安心して使える状態になって初めて選ばれます。

ここを超えられないと、どれだけ話題になっても「一度試して終わり」の商品になってしまいます。

LUUPは乗り物ではなく「使える仕組み」を作った

LUUPが広げたのは、電動キックボードそのものだけではありません。

日本の街で、それを普通に使える状態です。

ここが大きなポイントです。

LUUP公式の発表によると、同社は2019年から全国30か所以上の私有地・公有地で電動キックボードの実証実験を行い、大学キャンパス内での実証、公道での実証を経て、2021年4月から関係省庁によるルール整備に向けた実証実験にも参加しています。

これは、かなり重要です。

いきなり街に置いて「便利でしょ」と言ったのではありません。街の中でどう使えるのか。どんなルールが必要なのか。どこに危険があるのか。そうした前提から作っていったのです。

実証実験は「市場を作る作業」だった

実証実験というと、少し堅い言葉に聞こえます。

でもマーケティング視点で見ると、これは市場づくりです。

お客さんはどう使うのか。歩行者とどう共存するのか。道路でどんな問題が起きるのか。自治体や警察にどう受け入れてもらうのか。

ここを確かめずに広げようとすると、新しい乗り物はすぐに不安の対象になります。

便利そうだけど危ない。

使ってみたいけどルールが分からない。

周りに迷惑をかけそう。

そう思われたら、普及は止まります。

LUUPは、この不安を残したまま広げようとしませんでした。乗り物を作るだけでなく、使われる前提を整えにいったのです。

この考え方は、コカ・コーラのマーケティングにも通じます。コカ・コーラも最初から世界的ブランドだったわけではなく、まず飲んでもらう入口を作りました。新しいものは、存在しているだけでは広がりません。試せる状態、使える状態を作る必要があります。

ルールが整う前から、ルール作りに参加していた

新しい市場を作る時に難しいのは、商品だけでは完結しないことです。

特に電動キックボードのように道路を走るサービスは、便利さだけでは広がりません。法律、交通ルール、安全対策、自治体との関係、利用者のマナー。これらがすべて関係します。

ここが、普通の商品とは違うところです。

服やお菓子なら、商品を作って売り場に置けば、ひとまず販売できます。でも、街を走る移動サービスの場合、「どこを走れるのか」が決まっていなければ日常では使えません。

2023年7月の法改正で前提が変わった

2023年7月1日から、一定の基準を満たす電動キックボード等は「特定小型原動機付自転車」と位置づけられ、新しい交通ルールが適用されるようになりました。警察庁も、一定の要件を満たす電動キックボード等については、運転免許を受けずに運転できるようになったと説明しています。

これにより、電動キックボードは単なる珍しい乗り物ではなく、日常の移動手段として使いやすい前提が整いました。

もちろん、ルールが整ったからといって、すべての問題が消えたわけではありません。交通マナー、安全対策、歩行者との共存など、今も課題はあります。

それでも、ここで大事なのは、LUUPがルールの外側で暴れたのではなく、ルールの中で使える状態を作りにいったことです。

新しい市場を作るには、商品を広げるだけでは足りません。

お客さんが安心して使える社会的な前提まで整える必要があります。

ポートとアプリで「使い始めるハードル」を下げた

LUUPが街に広がった理由は、ルールだけではありません。

使いやすい導線も大きいです。

LUUPは、街の中にポートを設置し、スマホアプリで車両を探し、借りて、返せる仕組みを作っています。公式サイトでも、LUUPはスマホひとつで街じゅうのポートから電動マイクロモビリティに乗り降りできるシェアリングサービスとして紹介されています。

これは、かなり大事です。

もし電動キックボードを買わないと使えないなら、利用のハードルは一気に上がります。保管場所も必要ですし、メンテナンスも気になります。盗難の心配もあります。

でも、街中のポートで借りて、別のポートに返せるなら、話が変わります。

所有ではなく、必要な時だけ使える

LUUPが作ったのは、乗り物の販売ではありません。

必要な時だけ借りられる移動体験です。

駅から目的地まで少し遠い。徒歩だと時間がかかる。タクシーに乗るほどではない。バスを待つのも面倒。

こういう小さな移動のストレスに、LUUPは入り込みました。

つまり、大きな移動を変えたのではありません。

「歩くには少し遠い」という日常のすき間を取りにいったのです。

ここがマーケティングとして面白いところです。

新しい商品を広げる時、いきなり大きな市場を狙うと難しくなります。まずは、お客さんの生活の中にある小さな不便を見つける。そこに自然に入り込める使い方を作る。

この順番が大事です。

この「使われる場面を作る」という考え方は、ミンティアのマーケティングにも近いです。ミンティアも、コロナ禍で従来の利用シーンが変わる中、新しい買い場や使用シーンを見直すことで復活しました。商品そのものだけでなく、使う場面を設計することが重要なのです。

LUUP マーケティングから見える市場づくりの本質

LUUP マーケティングから見えるのは、新しい商品は「作ったら売れる」わけではないということです。

電動キックボードは、たしかに便利そうです。見た目も新しい。話題性もあります。

でも、それだけでは市場にはなりません。

どこで使えるのか。どう始めるのか。事故をどう減らすのか。ルールは明確なのか。周りの人に迷惑をかけないのか。

お客さんの頭の中には、こうした不安があります。

便利さより先に、不安を消す

新しい商品ほど、売り手はメリットを語りたくなります。

便利です。

速いです。

新しいです。

これから伸びます。

もちろん、それも大事です。ただ、買い手や利用者が本当に気にしているのは、メリットだけではありません。

自分にも使えるのか。失敗しないのか。怒られないのか。危なくないのか。周りに迷惑をかけないのか。

ここが解消されないと、人は動きません。

LUUPは、単に「電動キックボードは便利です」と言ったのではありません。ポート、アプリ、ルール、実証実験、安全対策を通じて、使える前提を整えていきました。

だから、ただの未来っぽい乗り物ではなく、街の中で使われるサービスに近づいたのです。

この点は、Spotify Wrappedのマーケティングとも共通します。Spotify Wrappedも、音楽データをそのまま出したのではなく、ユーザーが見たくなる形、シェアしたくなる形に整えました。LUUPも、乗り物そのものではなく、使える形まで整えたから広がりやすくなったのです。

商品ではなく「使える状態」を売っている

LUUPの事例で一番学べるのは、商品と市場の間には大きな距離があるということです。

商品がある。

便利そうに見える。

話題になる。

ここまでは、多くの新商品でも起こります。

でも、そこから日常に入り込むには、もう一段階必要です。

それが「使える状態」です。

市場に入るには、前提づくりが必要

LUUPは、乗り物を置いただけではありません。

街にポートを置く。アプリで借りられるようにする。ルールに合わせる。安全に乗るための情報を出す。自治体や関係者との実証を重ねる。

こうした積み重ねがあって、初めてお客さんは使いやすくなります。

これは店舗導線にも似ています。

お客さんが商品を欲しくなるには、商品だけでなく、見せ方や使う流れが必要です。IKEAのマーケティングでも、家具を単体で見せるのではなく、ショールームで暮らしのイメージを作り、商品が欲しくなる順番を設計していました。

LUUPも同じです。

電動キックボードという商品を見せただけではなく、使う場所、使う手順、使うルールまで整えた。

だから「面白い乗り物」から「移動手段」へ近づいたのです。

あなたのビジネスにどう応用するか?

LUUP マーケティングから学べるのは、新しい商品を売る時ほど、商品説明だけでは足りないということです。

多くの人は、自分の商品を売る時に魅力を語ります。

便利です。

新しいです。

他にはありません。

これから必要になります。

でも、お客さんが動かない時、足りないのは魅力ではないかもしれません。安心して使える状態が見えていないだけかもしれません。

商品だけでなく、始め方まで設計する

講座なら、カリキュラムの良さだけでなく、受講後に何から始めればいいのかを見せる必要があります。

コンサルなら、実績だけでなく、申し込み後の流れ、初回相談で話すこと、どんな順番で改善していくのかを明確にする。

整体なら、施術の効果だけではなく、初回来店から施術後までの流れ、通う頻度、どんな服装で行けばいいのかまで伝える。

新しいサービスなら、導入ステップ、サポート体制、失敗しやすいポイント、よくある不安への回答を先に用意しておく。

お客さんは、商品そのものだけを見ているわけではありません。

自分に使えるのか。

失敗しないのか。

面倒ではないのか。

ちゃんと続けられるのか。

周りに迷惑をかけないのか。

こうした不安を抱えています。

だからこそ、売り手が作るべきなのは、商品だけではありません。

お客さんが安心して使える状態です。

LUUPは、電動キックボードを街に置いただけではありません。実証実験を重ね、ルール整備に向き合い、ポートとアプリで使いやすい導線を作り、日常の移動手段として使える前提を整えました。

新しいアイデアは、それだけでは広がりません。

お客さんが安心して使える環境まで作って、初めて市場に浸透します。

あなたの商品も同じです。

「何を売るか」だけでなく、「どうすればお客さんが迷わず使えるか」まで設計する。

そこまでできた時、商品はただの新しいアイデアではなく、選ばれるサービスに変わっていくのです。

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この記事を書いた人

   

セールスコピーライター てらじまたくろう

高額でも御社の商品を買いたい人を特定し、集め、高値で販売し、売上に貢献するセールスコピーライター。LP、ステップメール、セールスレター、説明会台本、AI集客動画まで、売れる導線を一気通貫で設計。このブログでは、実際に売れた商品や広告を題材に、「なぜ売れたのか?」をマーケティング視点で解説しています。

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