人気の商品を見ると、「やっぱり味がいいから売れているんだろう」と考えたくなります。もちろん、味は大切です。おいしくない商品が長く選ばれ続けるのは難しいでしょう。
でも、長く愛される商品には、味だけでは説明できない強さがあります。
りくろーおじさんのチーズケーキも、そのひとつです。大阪に行った時、「あれ買って帰ろう」と思い出す人がいる。お店の前で人が並んでいると、つい気になる。焼きたてのチーズケーキという言葉だけで、少しワクワクする。
ここには、ただのチーズケーキ販売ではなく、買う前から始まっている体験設計があります。
りくろーおじさんの公式サイトでも、看板商品は「焼きたてチーズケーキ」として紹介されており、なんば本店には焼きたてチーズケーキや限定メニューを楽しめる陸カフェROOMも併設されています。つまり、単に持ち帰る商品ではなく、お店での体験や記憶まで含めて設計されている商品だと言えます。
行列は、ただの待ち時間ではない
行列は、お客さんにとって本来は面倒なものです。
待たないと買えない。すぐに受け取れない。時間がかかる。普通に考えれば、行列はマイナスです。
それでも人が並ぶ商品があります。
なぜでしょうか。
行列には、「それだけ欲しがっている人がいる」という見え方があります。お店の前に人が並んでいるだけで、通りかかった人は「何が売れているんだろう?」と気になります。すでに買うつもりだった人も、「やっぱり人気なんだ」と感じます。
行列は、ただの混雑ではありません。
商品に対する期待を高めるサインにもなります。
並んでいる人がいるだけで、期待は上がる
人は、自分だけで判断しているようで、周りの反応を見ています。
誰も見向きもしない商品より、人が集まっている商品の方が気になります。誰も並んでいない店より、列ができている店の方が「何かある」と感じます。
りくろーおじさんのチーズケーキの場合、行列は「売れている証拠」として目に入ります。
しかも、それがスイーツという分かりやすい商品だから強いのです。
難しい説明がなくても、「あの人たちはチーズケーキを買うために並んでいる」と分かる。見た瞬間に、人気と期待が伝わる。
これはマーケティングとしてかなり強い状態です。
りくろーおじさんは「焼きたて」を体験にしている
りくろーおじさんの強さは、チーズケーキをただ売っているだけではないところです。
「焼きたて」という言葉が、商品価値の中心にあります。
焼きたてと聞くだけで、温かさ、香り、ふわふわ感、できたての特別感が伝わります。冷蔵ケースに並んだケーキとは違い、「今まさに焼き上がったものを買う」という感覚が生まれます。
この違いは大きいです。
同じチーズケーキでも、「チーズケーキを買った」と「焼きたてのチーズケーキを買った」では、記憶に残る強さが変わります。
店舗で待つ理由がある
行列が価値になるためには、ただ待たせればいいわけではありません。
待つ理由が必要です。
焼きたてを買うために待つ。できたてを持って帰るために待つ。家族に喜ばれるお土産を買うために待つ。大阪に来た記念として買うために待つ。
このように、お客さんの中に「待つ理由」があるから、行列がただのストレスではなくなります。
なんば本店では、2F・3Fに陸カフェROOMが併設され、焼きたてチーズケーキや限定メニューを楽しめることも公式に案内されています。持ち帰るだけでなく、その場で味わえる場があることで、商品体験の幅が広がっています。
ふわふわ・ぷるぷるは、食べる前から価値が伝わる
りくろーおじさんのチーズケーキは、見た目でも価値が伝わりやすい商品です。
ふわふわしている。ぷるぷるしている。焼き印がある。箱を開けた時に、丸いチーズケーキがそのまま出てくる。
こういう商品は、食べる前から「おいしそう」が始まります。
マーケティングで大事なのは、説明しなくても伝わる価値を持つことです。
どれだけおいしくても、見た瞬間に魅力が伝わらない商品は、言葉で補足しなければいけません。逆に、見ただけで「ふわふわそう」「焼きたてっぽい」「家族で分けやすそう」と伝わる商品は、口コミやSNSにも乗りやすくなります。
食べる前から「買ってよかった」が始まる
お客さんは、商品を食べた瞬間だけで満足するわけではありません。
並んでいる時。焼きたてを待っている時。箱を持って帰る時。家で開ける時。家族や友人と分ける時。
その全部が体験です。
これは、手土産や食べ物ブランドでは特に重要です。
たとえば、乃が美のような食パンブランドも、ただパンを売っているだけではありません。「高級生食パンを手土産にする」という分かりやすい体験価値を作りました。りくろーおじさんも同じように、チーズケーキそのものだけでなく、「買って帰る体験」まで商品になっています。
大阪土産として強いのは、人に話しやすいから
お土産で大事なのは、味だけではありません。
どこで買ったのか。どんな商品なのか。なぜ人気なのか。渡した時に話題になるのか。
りくろーおじさんのチーズケーキは、この点が強いです。
「大阪で有名なチーズケーキ」
「焼きたてで売っている」
「行列ができていた」
「ふわふわで軽い」
「家族で分けやすい」
こうやって、人に説明しやすい要素が多いのです。
お土産は、商品そのものだけでなく、お土産話も一緒に渡しています。
行列に並んだ話まで、お土産話になる
ただ買っただけの商品より、「並んで買った商品」の方が話になります。
「大阪で行列に並んで買ってきた」
「焼きたてを待って買った」
「すごく人気だった」
この一言があるだけで、受け取る側の期待も上がります。
行列は、買う人にとっては少し大変です。
でも、その大変さがあるからこそ「わざわざ買ってきた感」が生まれます。
この「わざわざ感」は、お土産ではかなり強い価値になります。
11万円ウイスキーの事例でも、商品そのものだけでなく、限定性やストーリーが価値を高めていました。りくろーおじさんの場合も、焼きたて、行列、大阪土産というストーリーがあるから、人に話しやすい商品になっています。
行列は「みんなが欲しがっている証拠」になる
行列には、もうひとつ大きな役割があります。
それは、人気の可視化です。
広告で「人気です」と言われるより、実際に人が並んでいる方が伝わります。お店の前に人が集まっているだけで、商品への信頼が生まれます。
もちろん、意図的にお客さんを不便にさせる必要はありません。
大事なのは、人気が見える状態を作ることです。
レビュー、購入者数、予約待ち、販売実績、導入事例、写真、イベントの参加者、SNSでの反応。行列以外にも、人気を見える形にする方法はいろいろあります。
見える人気は、選ぶ理由になる
お客さんは、失敗したくありません。
知らない商品を買う時、誰かが選んでいる証拠があると安心します。
これは、店舗ビジネスだけではなく、講座、コンサル、オンライン商品でも同じです。
受講者の声がある。導入事例がある。申し込みが入っている。イベントに人が集まっている。リピートされている。こうした情報は、商品価値を支える証拠になります。
コストコの年会費も、買う前に年会費を払うというハードルがあります。それでも選ばれるのは、会員になる理由や体験価値があるからです。行列や年会費のような一見ハードルに見えるものも、設計次第では「選ばれる理由」に変わります。
あなたのビジネスにどう応用するか?
りくろーおじさんの事例から学べるのは、「行列を作れば売れる」という単純な話ではありません。
大事なのは、商品そのものの前後にある体験を設計することです。
お客さんは、商品を受け取る瞬間だけで判断しているわけではありません。
知った時。気になった時。買う前に迷った時。申し込んだ時。届くまでの時間。使った後。人に話す時。
この全部が、商品価値に関わります。
待つ理由を作る
もしあなたの商品に待ち時間があるなら、それをただの不便にしないことです。
なぜ待つ価値があるのか。待っている間に何を期待できるのか。順番が来た時に、どんな特別感があるのか。
ここを設計すると、待ち時間は不満だけではなく、期待に変わります。
講座なら、事前課題や準備シートを渡す。コンサルなら、相談前に現状整理フォームを送る。商品発送なら、届くまでの間に使い方の案内を送る。
ただ待たせるのではなく、待つ時間にも意味を持たせるのです。
見える価値を作る
次に考えたいのは、見た瞬間に伝わる価値です。
りくろーおじさんのチーズケーキは、焼きたて、ふわふわ、丸い形、焼き印、行列など、視覚的に伝わる要素があります。
あなたの商品にも、見える価値を作れないでしょうか。
ビフォーアフター、実績画像、作業工程、受講者の変化、納品物の一部、相談前後の整理図。こうしたものがあると、言葉だけより伝わりやすくなります。
田んぼアートのように、見に行きたくなる商品は、体験そのものが価値になります。商品をただ説明するのではなく、「見たい」「体験したい」「誰かに話したい」と思える要素を作ることが大切です。
人に話したくなる一言を作る
最後に、お客さんが人に話しやすい一言を用意することです。
「大阪で行列に並んで買ったチーズケーキ」
「焼きたてで有名なチーズケーキ」
「ふわふわで軽い大阪土産」
こういう言葉があると、口コミが起きやすくなります。
あなたの商品も同じです。
「何がすごいのか」
「誰に向いているのか」
「なぜ選ばれているのか」
「どんな体験があるのか」
これを一言で言えるようにすると、人に紹介されやすくなります。
売れる商品は、商品そのものだけで勝っているわけではありません。
買う前の期待、待つ時間、見た目で伝わる価値、人に話したくなる記憶。
そこまで含めて、商品になっています。
りくろーおじさんのチーズケーキが「並んででも買う商品」になった理由は、ただおいしいからだけではありません。
行列さえも、焼きたて体験の一部になっているからです。


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